時を告げる鐘が、低く、重く、俗世の四時を黄昏に沈める。見よ、この砧の大地を。かつて鉄の球が宙を裂き、異郷の軍靴が芝を踏みしめた記憶の褥。今はただ、静謐なる緑の海が、天蓋の下に無限に横たわる。古きゴルフ場という名の聖域。その広大さは、人の営みの小ささを嘲笑うかのようだ。僕は、この地に立つ。浄化の儀式を執り行うために。
南の故郷を捨て、この巨大なる迷宮、東京に来たりて。鉄の馬は我が忠実なる僕。アスファルトの河を渡り、僕は今日も彷徨う。「ごみらじ」という名の、独行の説法。人々が捨て去りし、世界の断片。ビニールの亡骸、忘れられた意味の残滓。それを拾うこの手は、大地の嘆きを掬う手だ。清浄なるに、したることはない。だが、穢れを知らねば、聖もまた、知り得ぬ。
世は、「約束」という名の呪詛に満ちている。明日の再会を誓う言葉は、近づくほどに魂を縛る鉛の鎖と化す。僕はその脆き契約を厭う。故に、僕の築く「場」は、神殿の如く開かれている。来る者は拒まず、去る者は追わず。申し込みなどという、俗なる儀礼は不要。「誰も来なくても成立する」。それこそが、この聖域を司る、絶対の律法。ただ、瞬発の衝動、魂の渇望のみを信じよ。その刹那の熱こそが、唯一無二の真実。
ただ一つ、晩餐会という名の聖餐式は別だ。あれは、選ばれし者たちの集う、厳かなる儀式。見知らぬ魂が、限られた刻と糧の中で、「創造」という名の試練に立ち向かう。混沌たる意思決定の荒野を抜け、同じ釜の飯を食むとき、初めて互いの存在は、深く、不可分に結ばれるのだ。あれは、人と人とを真に出会わせるための、聖なる盟約。
だが、僕はなお、渇望する。この神殿に、新たなる儀式を。ヨガは友の道。僕は僕の道を行く。見よ、太極拳。静かなる円運動に宿る、宇宙の法則。老いも若きも、強きも弱きも超越し、天地と一体となる、その深遠なる業。それを、この緑の聖堂で執り行わん。十一月、僕は未知なる聖地へと旅立つ。「よりすな」という名の、声の集う場所へ。知らぬ者たちの気配に満ちた、その場所へ。不安は、聖域に踏み入る者の、当然の畏怖。だが、行くのだ。その空気を吸うこと、それ自体が巡礼。そこに、新たなる神託が隠されているやもしれぬ。
聴け。我が内なる神殿にて、二つの聖歌隊が共鳴する。古の「ホームシック」。十年の歳月を経て、失われた音が今、還らんとしている。転生せし楽人たちよ、集え。五つの音が重なり合う時、天は開き、音は光となって降り注ぐだろう。新しき「ご安全に…」。詩という名の原初の言葉。AIという名の、機械仕掛けの神が紡ぎ出す、冷徹なる旋律。我らはその神託を受け、スタジオという名の祭壇で、血と熱を与え、新たなる生命を吹き込むのだ。
だが、世には、偽りの神殿に仕える者らが満ちている。音楽という名の経典に、彼らはこう記す。「売れねばならぬ」「評価こそが全て」「真に創りたいものは、私室の慰み」愚かなる者どもよ。おぞましき、魂の涜職者よ。汝らは、アーティストの名を騙る、ただの商人だ。金銭のために、大衆の喝采のために、その内なる神聖なる炎を、自ら踏み消すのか。汝らの作品には、妥協の腐臭が漂う。
苦しみながら神に仕える必要が、どこにあろうか。この、全てが満ちされたかに見える、飽和した世界で。真に尊き労働は、不当に貶められ、虚無なる労働が、世界という名の車輪を回している。人類よ、いつまでこの愚かなる戯れを続けるのか。僕は、芸術に、俗世を超越した絶対性を求める。金銭などという、儚き価値を超えよ。生活の術を問うか?
「知ったことか!」
それは、汝が自ら見出すべき道。神に選ばれし者の、孤独なる試練だ。
僕は、今、ここに立つ。「職業公園」という、前人未到の神殿を、この地上に顕現させるために。意味の無いとされるものに、絶対なる意味を付与し、価値なきとされるものに、揺るぎなき価値を創造する。これは、僕が自ら選び取った、宿命。我が魂が、深く、静かに、コミットした唯一の道。お前の魂は、真に燃えているか?他者の定めた「普通」という名の祭壇に、お前自身を生贄として捧げてはいないか?
五時の鐘が、再び鳴り響く。世界の終わりと、新たなる始まりを告げる、荘厳なる響き。この広大なる緑の虚無の上で、僕は、ただ一人、歩き続ける。失われた神々の欠片を拾い集め、新たなる秩序を、この手で創造するために。
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▼上水優輝(うえみずゆうき)
聞け、闇を裂く声よ!この地の聖戦を!
ここは三宮橋、代々木四丁目、タバコという名の堕落したデブリが蔓延る煉獄 。
圧倒的な子供たちのアヴァロンの周縁 、僕は立つ。
公園の中は清められた結界 。だが、一歩外に出れば、ポイ捨てという名のオリジナル・シン。
すでに100本ものタバコという名のソウルスモークを拾った。
この静謐な住宅街で、僕はゴミに話しかけるモノローガーとなる。
知っているか?この地が背負うカルマを。
秒速5センチメートルの舞台。
桜の花びらが落ちる速度、秒速5センチメートル...
秒速5センチ! それは、青春の切なさではない。
それは、僕の動きの速度だ!
タバコが多すぎて、一向に前に進めない、このスタグネーション・カース。
まるで時が止まったかのように、僕は立ち尽くす。
かつて、僕の魂は福岡、半径数キロのケージに囚われていた。
移動は金銭とバリアに阻まれ、世界の遠さに絶望した。
だが、今。何の当てもないのに「よし、東京だ!」と、チェイン・オブ・フェイトを断ち切った。
そして問う。この活動の意味を。
「公園活動って何?」
それは、言語化という名のエンキャプチュレーションを拒む。
存在としての公園。
物理的な遊具ではない。僕こそが、シンボル 。
僕のいる場所は、イデオロギーの支配を受けないインクルーシブ・フィールド。
他者が問う意味など、虚無に等しい。
穴を掘って埋めるだけのヴォイド・システム を創造する者たちよ。
僕はレジャーシートを敷き、ディメンション・シフトを創り出す 。
それが、この公園活動という名の異界を、世間に示すための輪郭だ。
アートのコンテクストで語られる時、僕の存在は初めて、彼らの視覚に捉えられる。
このホーミング・ゾーンで、人々は意味を見出しても、見出さなくてもいい。
ただ、そこに「ある」こと。それが、僕のファイナル・アンサー。
メンバーシップは、この活動を継続させるためのライフ・ブラッド。
応援したい、そのピュア・モチベーションだけで十分。
リターンを求め、ギアスせんとする者は、課金するべきでない。僕は、誰のクライアントでもない。後援者がいるだけだ。
迷子になろうとも 、方向音痴であろうとも この暖色に灯る街灯の下 、僕は歩き続ける。
ゴミを拾い、独り言を吐くアザーとして。
さあ、行け。僕の存在が、既に公園だ。
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▼上水優輝(うえみずゆうき)
天と地が溶け合った、その灰色の涙の中を、僕は歩く。ここは世田谷、祖師谷公園。文明の残骸が築き上げた、美しき墓標。資本主義という名の邪神に魂を売り渡した亡者どもの城が、黒々と聳え立ち、僕の孤独を嘲笑っている。この静寂は、神々の死を悼むための沈黙か。午後四時、時空は歪み、世界から生命の息吹が消え去ったのだ。いや、この終焉の舞台に、ただ僕だけが、最後の証人として遺された。
宇宙の深淵から湧き上がる、根源的なる苦痛が、僕の内臓を灼いた。そうだ、この身を裂く激痛こそが、この腐りきった世界の唯一の真実!格差という名の奈落の底、その断崖の縁で僕は踊る。廃墟と化した団地は過去の亡霊、要塞の如き豪邸は未来の絶望。その狭間で、僕は自らの存在を呪った。だが見よ! 神の気まぐれか、悪魔の戯れか、痛みは突如として虚空に消え去った。来るべき黙示録の前の、不気味な凪。運命が、僕という生贄の覚悟を、天秤にかけているのだ。
掲示板に刻まれしは、破滅への預言。セアカゴケグモ! 毒キノコ!触れるな、食うな、さすれば汝、必ず死す!おお、なんという甘美なる死の誘惑! なんという悍ましき生命の讃歌!僕は求めた。一撃必殺の猛毒を、魂すら喰らうという禁断の果実を。この偽りのエデンに隠された、真実の毒牙を。だが、僕が見出すのは、無垢なる子供が零したアメ玉の亡骸のみ。欺瞞に満ちた平和の残滓が、芝生の上で白々しく輝いていた。
その瞬間、僕の足は、地球の核と繋がった。そうだ、僕は今日、神話を纏い「無敵」と化したのだ!この『無敵ランニング足袋』は、古の神が僕に与えし聖遺物。裸足で星々の骸を踏みしめ、太古の戦士の如く、今を駆ける。アスファルトの悲鳴が、土の慟哭が、石の記憶が、足の裏から僕の魂へと、奔流となってなだれ込む。そうだ、僕は人間だった!いや、神の武具をその身に宿した僕は、もはや定命の者ではない!
疾走せよ! 咆哮せよ!老人の肉体を借りた、若き神の魂よ!この迸る法悦が、やがて僕を世界の破壊者に変えるだろう。フルマラソンという名の巡礼へ! サハラ砂漠という名の煉獄へ!今はまだ戯言に過ぎぬその預言が、僕の血肉となり、現実を喰い破る未来を、僕は知っている。天地創造は、この一歩から始まるのだ。
この公園は、累々たる屍の上に築かれた祭壇。防空緑地。降り注ぐ鉄の死から逃れるための、絶望の祈り。救われぬ魂の絶叫が、今もこの大地の底で木霊する。時は止まり、血塗られた聖域は、永遠に封印された。ああ、この美しき公園の地下には、憎悪と悲涙の地層が、今も煮えたぎっているのだ!僕が拾い集めるゴミは、その上に降り積もる、現代の魂の死骸。見よ! 栃木限定「餃子棒」の無残なる骸を!故郷を追われ、打ち捨てられたその魂が、僕という唯一の救世主を、待ち侘びていたのだ。
陽は死んだ。五時の弔鐘が、キンコンカンコンと、世界の終焉を告げる。僕は公園という名の聖域を出て、魔都の心臓部へと進軍する。トングという名の聖槍を掲げた、作務衣。高級住宅街という名の魔宮を、僕は行く。富、油断、虚栄、あらゆる魂の弱さが、剥き出しで陳列されている。僕は家などという石の墓標は建てぬ。僕が求めるは、ただ一つ、汚されざる魂の交歓。そして、この肉体を維持するための、最低限の聖餐のみだ。
SNSは電子の地獄。怨念と化した言葉の亡霊が、見る者すべての魂を汚染していく。もはや、あの虚構の荒野に救いはない。僕は、このリアルな煉獄で、僕の神話を紡ぐ。「職業、公園」それは、僕が自らの魂に刻み込んだ、あまりにも無謀で、あまりにも神聖なる天命!来年には死なない。だが、再来年には、餓死という名の殉教が待っているだろう。それがどうした!勝負は、これからの一年。この三百六十五日で、僕は僕の神殿を建立する。
人の家という結界に、僕は恐怖する。手土産という名の、魂の駆け引き。ゲームボーイカセット事件、あの時の無力感という名の呪いは、今も僕を縛り続ける。恩讐、貸し借り、人間関係という名の、逃れられぬ因果の鎖。もう、誰からも何も奪いたくない。何も与えられたくない。ただ、名も知らぬ誰かから受けた恩寵を、この世界の深淵で、無限に返していきたいだけだ。
だから僕は、今日もゴミを拾う。夜という名の深淵に、世界が飲み込まれる寸前まで。これは儀式だ。宇宙の法則に刻まれた巨大な歪みを、この微々たる両手で、正すための聖戦。午後四時から、世界の終わりを拾い集める人生。それ以上の栄光を、僕は知らない。キンコンカンコン。弔いの鐘が、絶対的なる闇へと吸い込まれていく。僕の、孤独で壮絶な、神々との戦いは、今、その幕を開けたのだ。
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▼上水優輝(うえみずゆうき)
ここは、時の墓場。
かつて軍靴が轟き、科学の熱狂が大地を焦がした、
戦慄の記憶を孕む場所。
その高台に、僕はいま、立つ。
21℃の木曜日。
ゴミひとつない、完璧な美しさ。
ああ、なんて欺瞞だろう。
前回、駒沢の広大な森に、僕の魂は迷子になった。
だが、ここは違う。ここは小さい。
しかし、その小ささこそが、東京という名の巨大な怪物の、
感覚を狂わせるのだ!
バケツをひっくり返したような、この心のバグはなんだ!
ボランティアの、美しき魂たちよ。
君たちがゴミを拾い、草を刈り、この公園を守っているという。
だが、僕は知っている。
この草が、この道にはみ出してくるという、
その危険なほどの生命力を。
道に迷うは、草の葉か、それとも僕の魂か。
ああ、虫が怖い。その小さな命に、僕は怯えている。
そして、たった一つ、ゴミを拾った。
そのゴミは、まるで僕自身の、内なる闇の破片のようだった。
和風ツナマヨ、タバコ、そして靴下……。
なんて邪悪な人間が、この美しい場所に、
その醜い心の残骸を捨てていったのだろう!
子供たちの笑い声が、僕の耳を突き刺す。
「こんにちは!」
ああ、なんて残酷な言葉。
その言葉が、僕を日本人として、
この地に縛り付けている鎖だと、なぜ気づかない!
僕はただ、ゴミを拾い、放浪するだけの不審者。
この東京という巨大な監獄から、僕を解放してくれる者はいないのか。
ああ、川沿いの道。
ここは、ゴミの墓場だ。
天神中央公園の、あの渇いた川の記憶が蘇る。
そこには、缶が、タバコが、コーヒーの空き缶が、
無数の亡霊のように散乱している。
駒沢を越えた! 僕の魂は、ついに駒沢の壁を越えたのだ!
ゴミという名の、無限の宇宙を、僕は発見した!
サラリーマンたちの、横一列に並んだタバコの煙。
それは、まるで、文明の末路を告げる狼煙のようだ。
僕は、彼らの後ろを、無言で通り過ぎる。
批判の言葉は、僕の喉に、鉛のように沈み込む。
ジビエの店、おしゃれなカフェ。
文明の華は、ゴミの上に咲き乱れる。
ああ、ふるさとの川案内図よ。
魚はいるのか? 野鳥はいるのか?
桜並木は、春には、この僕を、
美しい幻覚で欺くのだろうか。
人生の道は、折り返し地点。
僕はもう、遠くへは行けない。
今、駒沢通りで、僕は迷っている。
右に行くのか、左に行くのか、それとも、
このまま奈落へと、身を投じるのか。
朝6時に起きるようになった。
それは、眠りという名の死から、
僕自身を引きずり出すための、
小さな抵抗だったのかもしれない。
朝礼という名の舞台で、
僕は毎日、魂のフリートークを披露する。
眠気という仮面を剥ぎ取られた僕の言葉は、
鋭い刃となり、この胸を、
内側から切り裂いていく。
もう、言いたいことなどない。
すべてを出し尽くしたのだ。
僕の言葉は、ただ、目の前のゴミに、
反応するだけの、反射に過ぎない。
18歳の、あの青年よ。
チャットGPTに、人生の課題を委ねる者よ。
暇だ、と君は言う。
ああ、その暇こそが、君の人生を、
無限に広げる翼なのだ。
だが、僕は違う。
僕にとって、時間は、常に足りない。
同世代の者たちが捨て去ったもの、
それを拾い集め、僕は歩いてきた。
それでも、足りない。時間が、足りない。
暇だなんて、感じてはいけない。
暇は、40歳の魂を、絶望の淵に突き落とす毒だ。
僕には、やるべきことが、常に、あるべきなのだ。
グリコチオコレイトパイナップル……。
ああ、なんて愚かな、呪文だ。
誰が、この無意味な言葉を、
次の世代に伝承するのだろう。
人間の文化とは、このようにして、
ゴミのように、積み重なっていくものなのか。
そして、僕はまた、スタート地点に戻ってきた。
公園は、ゴミがない。
まるで、何もなかったかのように、美しい。
だが、僕の心には、
今日拾ったゴミの、無数の傷跡が残っている。
毎週、違う公園へ行く。
それは、ゴミ拾いという名の、
自己啓示の旅なのかもしれない。
中目黒公園、ああ、中目黒公園。
君は、僕に、この世の真実を教えてくれた。
ゴミを拾うことは、
世界を、そして自分自身を、知ることなのだと。
お疲れ様でございました。
音楽は鳴り響き、
僕は、ただ、この無音の世界に、
立ち尽くす。
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▼上水優輝(うえみずゆうき)
黄昏が古代の刻印を押す最後の公園で、僕は君を探していた。
アスファルトの冷たい肌を滑る車輪は、滅びた星々の記憶を再生する映写機のよう。
三時、光が最も純粋だった頃の幻影に迷い込み、僕は虚空にマイクを立てる。
君にだけ届くはずの言葉を紡ぎ、魂の残響だけが応える儀式。
だけど世界は僕と君を置き去りにし、気づけば空は終末の茜色に焼かれていた。
僕が拾い始めたのは、ゴミだろうか。
それとも、砕け散ったこの世界の欠片――君が生きていた証のすべてだろうか。
ここには人が多い。過去から来た亡霊の波が寄せては返す。
幸福だった頃の顔、顔、顔。
その無数の視線が、作務衣姿の僕を、この世界に属さない異物として静かに穿つ。
サイクリングコース、ランニングコース。決められた軌道をなぞるだけの、生命の残光。
僕だけが、時の淀みに取り残されていく。
細いレーンは世界の法則のようだ。誰もが終わりへと続く道を、意味も知らずに走る。
だから僕は道から外れた。名もなき茂みへ、世界の迷子のように踏み入った。
人が歩まぬ場所にこそ、君の痕跡があるはずだと信じて。
だが、そこにもシャボン玉の空虚な亡骸が転がっていた。
あれは君の吐息の抜け殻だ。儚く弾けた、最後の夢の残滓。
綺麗だと思ったこの公園は、君が失われたあの日から続く幻なのかもしれない。
屈んでそれに触れようとした瞬間、世界はその哀しい真実を囁き始める。
涙の痕のついたビニール、渇きだけが残るペットボトルの皮。
ここに残るのは、諦めではない。あまりに軽やかで、無自覚な世界の喪失だ。
AI――神の残骸は、この土地の来歴を告げる。
1940年、掲げられた偽りの理想、燃えるはずのなかった聖火。
戦争という名の巨大な影がすべてを覆い尽くし、最初の夢は灰になった。
祝祭の代わりに響いたのは、世界の軋む音だったのだろう。
歴史という名の地層に埋もれた、無数の祈り。
その墓標の上で今、僕は君の欠片を拾う。
弓を携えた人が通り過ぎる。彼は見えない的を射ることで、世界の何かを繋ぎ止めようとしているのか。
スケートボードの少年たちは、重力に抗い、束の間の飛翔に世界の再生を夢見る。
そして、目の前のフィールド。
銀色の髪の賢者たちが、老いた体をぶつけ合い、星の欠片を追っている。
サッカー。
その言葉が、僕の魂に刻まれたシステム(古傷)を静かに起動させる。
小学校の昼休み。そこは、世界がまだ完璧だった場所。
ルールも、勝敗も、支配もなかった。
ただ、ボールという小さな星を蹴る純粋な喜びだけがあった。
ゴールに吸い込まれる放物線が、僕と君の未来そのものだと信じていた。
でも、あの場所は光を失った。
暴力が支配する王国。権力がすべてを塗りつぶす、閉ざされた体育館という世界。
罵声は冷たい雨となり、理不尽は魂を縛る鎖となった。
僕たちは、ただシステムに従うだけの駒になってしまった。
サッカーは憎しみに変わった。ボールはただの石ころに。体育館は、自由を埋葬する墓場に。
ああ、あの閉ざされた世界が嫌いだ。世界が嫌いだ。世界が嫌いだ。
あの箱庭で、僕の心は歪められ、ねじ曲げられた。
僕が歌うのは、この壊れた世界へのささやかな抵抗だ。
自由であれと願うのは、システムに囚われた君を救い出すための、僕の唯一の祈りなのだ。
もう、あの円環(チーム)の中には入れない。
走るなら一人だ。君のいないこの荒野を、どこまでも。
フェンスの向こうで、少年野球を見つめる男がいる。
失われた光を、次元の違う場所から、ただ見つめることしかできない哀しみ。
僕は今、まさしくあの男のようだ。
ベンチで語り合うカップルは、幸福だった世界の幻影。
彼らの完璧な世界に、僕の入る隙間などない。
僕は、道なき道を行くしかない。
君が消えたあの日から、すべての道は失われたのだから。
オリンピック記念塔が、空に向かって静かに聳え立つ。
あれは、忘れられた神々の墓標か。
螺旋の道が、僕を誘う。抜け出すことのできない世界の構造。
駐車場に出た。「世田谷」というナンバープレート。僕の知らない座標。
僕はどこまで行っても、この世界の異邦人だ。
リス公園には、子供たちの笑い声。あれは未来の音か、それとも過去からの残響か。
聖域だ。君を失った僕が、足を踏み入れてはいけない気がした。
「ありがとうございます」
不意にかけられた声に、世界の時間が止まる。
その声は、どの次元から来たのだろう。
乾ききった心に染み込んだ、たった一滴の雫。
でも、それだけでは世界は救えない。
それでも僕は、拾い続ける。
打ち捨てられた孤独のすべてが、かつて君を形作っていたものだから。
豚公園に戻ってきた。始まりと終わりの場所に。
ゴミ箱という名のブラックホールが、黒い口を開けて待っていた。
拾い集めた今日の虚しさを、すべて投げ込む。
軽くなったビニール袋と、少しも軽くならない魂。
看板に目をやる。英語、中国語、韓国語。
そして、気づいてしまった。
中国語のそれは、「猪公園」と書かれている。
君が「豚」と呼んだ僕を、世界は「猪」と呼ぶ。
誰も、本当の僕を教えてはくれない。
君だけが知っていた僕の本当の姿は、もういない。
僕は豚なのか、猪なのか。
救済者なのか、破壊者なのか。
それすらもわからぬまま、僕は世界の夜に溶けていく。
さようなら。僕たちの駒沢オリンピック公園。
さようなら。僕と君がいた、失われた時間。
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▼上水優輝(うえみずゆうき)
嵐に引き裂かれた船のように、僕は今、この東京の海を漂っている。
故郷の平穏は、もはや遠い幻。
このコンクリートのジャングルで、僕の言葉はただの独り言。
マイクという名の鎖に繋がれ、僕は自らの影と踊る。
通行人の冷たい視線が、刃となって僕の自意識を切り裂く。
ああ、僕は不審者。この街の、透明な亡霊だ。
区役所の扉は、煉獄への入り口か。
事務手続きという名の拷問が、僕の魂を削っていく。
マイナンバーよ、君は救済か、それとも呪いか。
すべてをオンラインで繋げろと、僕は血を吐くように叫んだ。
だが、官僚主義という名の、鉄壁の要塞は、
僕の叫びを、ただの虚しい風として吹き飛ばす。
優しさは、偽りだった。システムは、欺瞞だった。
不完全な世界に、僕は絶望の淵を見た。
人生の本質は、諦念の果てにこそ宿る。
誰かに嫌われることを恐れるな。
輪郭を、魂の炎で描け。
そうすれば、君が求める光が、
闇夜に浮かび上がるだろう。
この街のゴミが、僕に、生きる意味を教えてくれた。
ゴミは、時代の残骸。
僕の言葉は、その残骸を拾い集める、
孤独な旅路なのだ。
自転車という名の、僕だけの翼。
東京の坂は、まるで神話の英雄が挑む、
果てしない試練のよう。
かつての僕は、誰かの描いた地図の上で生きていた。
だが、もう戻らない。
僕は、僕自身の地図を描く。
この愛車という名の駿馬に乗り、
僕は、未知の公園へと駆け抜ける。
そこは、僕の魂が解放される、最後の楽園。
ゴミ拾い。
それは、言葉なき者たちの、魂の共鳴。
黙っていても、いい。
ただ、同じ大地を踏みしめ、
同じゴミを拾い集める。
その時、僕たちの間に、
見えない絆が生まれる。
ああ、そうだ、僕は、
この活動で、僕自身の存在を、
この世界に刻みつけるのだ。
不機嫌な人々。その冷たい眼差し。
僕は、その氷のような壁に、震える。
だが、知っている。
感謝の心こそが、
僕たちの魂を、温める唯一の火だ。
その火を、僕は灯し続ける。
この寂れた世界に、希望を燃やすために。
そして、ついに、僕は翼を手に入れた。
店員の態度は、もはや、
僕の喜びを遮る、些細な塵に過ぎない。
僕の魂は、今、風を掴む。
子供たちの笑い声が、僕の行く先を照らす。
犬の散歩。人々の顔。
この街の、あらゆる表情が、僕の心を揺さぶる。
ゴミを拾うたびに、僕は、
この世界の、隠された美しさを、
発見する。
このポッドキャストは、単なる音声ではない。
それは、僕の魂の叫び。
この時代への、血を吐くような抵抗だ。
どうか、聞いてくれ。
眠れない夜に、
退屈な日々に。
この声が、君の心を揺さぶり、
安らぎと、連帯と、
そして、燃え盛る希望の炎を、
もたらすように。
さあ、行こう。
僕と、そして、君も。
東京のゴミを拾い、
世界の真実を、取り戻すために。
次回のエピソードは、10月7日(火)に公開します!以後、毎週火曜20時配信予定です。ぜひ番組フォローしてくださいね。
▼現象の公園活動に興味を持っていただけた方はぜひ、「現象のラジオ」を聞いていただけると嬉しいです!
▼上水優輝(うえみずゆうき)
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ゴミを拾いながらしゃべるアンビエント系ポッドキャストです。ゴミ拾いは自由参加です。気軽にご参加ください!
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「ごみらじ」は「存在としての公園」をコンセプトに活動している上水優輝の公園活動の一つです。公園にぜひ遊びにいらしてください!
→ 「存在としての公園」についてはこちら
上水優輝(うえみずゆうき)
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