全く0から自然農法を始めた僕の30代は本当にいろんな困難と学びの連続でした。自然栽培の農家としての農作業と会社の経営、4人の子供が次々に生まれる中で、大変な思いも何度もしてきました。その度ごとに、どうしたらこれを「楽しくやる」という心を保ち続けることができるかを問いながら、自分自身の心のあり方や考え方を大胆に変え続けてきました。0から新しいものごとを始めるときには、自分が楽しいと思うことを楽しくやることが一番大切だと思っていたからです。
「ぼーっとした時間を作るために、仕事を瞬足で終わらせる」
生前父と仕事のやり方を話していた時に、教えてもらった唯一の仕事術です。その時は、ぼーっとした時間の尊さをわかっていなかったんですが、就農して起業して、ぼーっとした時間を過ごす大切さがわかってきました。
働く時間ももちろん大事ですが、自分の心の声を聴く何もない時間が大事だと僕は思っています。働く時間は自分のやり方を磨く時間。休む時間は自分のあり方を洗練させる時間。生活費を稼ぐためだけの仕事にならないように、誰かの言いなりになってしまう生き方にならないように、自分の生きる軸を作っていく期間と時間が人生には必要ではないかと思っています。
自分は自分で起こることは起こること。コントロールできることとコントロールできないことを見定めることができるようになってから、随分と心の安定感が増したような気がします。起きてしまったことに後悔はせずに、学ぶだけ学んで、感情ごと捨てる"技術"。見えない技術が自然栽培の農家という環境や自然に左右されやすく、難しい仕事をしていると自然に身に付いていくように感じます。
自分が「どうやって成功するか」ということよりも、相手が「どうやったら喜んでもらえるか」、「嬉しいと思ってもらえるか」を考えることで、僕らが相手に幸運を運んであげられる人になれると気づきました。今までのささやかな経験から、幸運を運べる人の条件を考えてみました。
父が人生の最後に見せてくれた、自分が楽しむことで家族を喜ばせるあり方。自分がワクワクすることで、家族が喜ぶことを自分の仕事にし続けられるようにこれからも考え続けるつもりです。
福祉事業所との共同作業は、僕らにとっても大きな学びの機会になりました。それまでは、お茶をいかに効率的に作るかということを一番に考えていましたが、お茶作りの作業を通して、皆の人生をいかに豊かにしていけるのかということも考えられるようになってきました。僕らの人生はきっと、いかに効率的に成功するかだけではなくきっと、望んでもなれないかもしれない成功者にを目指すだけではなくて、目の前の人に笑顔になってほしいという思いで働いていくことで豊かになると思っています。
特に特別な能力のない僕にとっては、コツコツと継続し続けるというやり方以外に、自分を磨く方法がないことを悟っていたので、今でもいろんなことを習慣化できるまで挑戦しています。
感謝と感謝、一つの喜びがまた新しい喜びを生んでいけるように僕らはその仕組みを作ることがとても大事だと思っています。
子供が1人、2人、3人と増えていく中で、僕の仕事中心の生き方も少しづつ、家族中心の生き方に変わっていきました。妹の出産があり、母が倒れ、娘の送り迎えに頭を悩ませながら毎日を過ごしています。昨年、病に倒れた母との会話をきっかけに、働く価値とそこにいる価値について考えています。
夜9時には寝て、朝5時ぐらいに起きる生活を続けています。起きる時間は、自分の体調に合わせて、体が自動調整してくれるようになってきました。体調が思わしくないときは、自動的にゆっくりと7時ぐらいに起きています。体と心は自然の一部だと僕は思っています
農家から始まって、茶道を始めて、経営者になって、農福連携を進めて、アメリカに出張してと普通の自然栽培の農家としては、規格外と言われてきました。それはきっと僕がある時点からピッパ星人だと意識しだしたからだと思います。
それでも幸いなことに30代で経営者になれて、仕事と心の問題に早くから取り組めたことで、仕事と両極にある家族事の大切さに気づくことが出来ました。家族が幸せを感じれば感じるほど、僕の仕事もうまくいくように感じています。
できる限り家内の要望に応えて、子供たちを秘書として仕事に連れていき続けています。今では、長男、長女が卒業して、3代目の次男、宗次郎が僕の秘書をやってくれています。
家庭と会社をいかに幸せにするか、それが僕にとっての命題ですが、それを実践するために欠かせないのは、自分の心が穏やかであることがまず大事なことだと思っています。
自由にあるがままの心で生きられなかった自分の弱さゆえに、うまく行かなかったことは全て他人のせい。学校、親、社会、世界、フランス大統領。何度か爆発して、もがいて、うまいくっているのに情けなく感じていました。20代前半で気づいたことは、僕にとって、うまく生きることではなくて、あるがままの心で生きることの方が大切ということでした。
「子育てが仕事より大事だよ。利益よりも地球環境の方が大事だよ。」
そういうメッセージを働き方に込めて、個人の努力や頑張りに期待するのではなく、皆が皆自分の毎日の仕事をスムーズにやり続けることで、会社の最高のパフォーマンスを発揮できるように仕組みを組み替え続けています。
自分の気持ちをどう伝えるか、彼らの気持ちをどう温かくしてあげられるか。自分の人生は結局、自分の心次第。普段から心を温かくしないと成功からは程遠い人生になってしまうように思います。