桜桃
著者:太宰 治 読み手:福井 慎二 時間:22分57秒
われ、山にむかいて、目を挙ぐ。
――詩篇、第百二十一。
子供より親が大事、と思いたい。子供のために、などと古風な道学者みたいな事を殊勝らしく考えてみても、何、子供よりも、その親のほうが弱いのだ。少くとも、私の家庭においては、そうである。まさか、自分が老人になってから、子供に助けられ、世話になろうなどという図々しい虫のよい下心は、まったく持ち合わせてはいないけれども、この親は、その家庭において、常に子供たちのご機嫌ばかり伺っている。子供、といっても、私のところの子供たちは、皆まだひどく幼い・・・
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科学者とあたま
著者:寺田 寅彦 読み手:水野 久美子 時間:15分43秒
私に親しいある老科学者がある日私に次のようなことを語って聞かせた。
「科学者になるには『あたま』がよくなくてはいけない」これは普通世人の口にする一つの命題である。これはある意味ではほんとうだと思われる。しかし、一方でまた「科学者はあたまが悪くなくてはいけない」という命題も、ある意味ではやはりほんとうである。そうしてこの後のほうの命題は、それを指摘し解説する人が比較的に少数である。
この一見相反する二つの命題は実は一つのものの互いに対立し共存する二つの半面を表現するものである・・・
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月を見ながら
著者:正宗 白鳥 読み手:松岡 初子 時間:12分55秒
縁側に蹲んで、庭の樹の葉の隙間から空を仰ぐと、満月に近い月が、涼しさうに青空に浮んでゐる。隣家から聞えて来るラジオは流行唄を唄つてゐる。草叢には虫の音が盛んで、向うの松林には梟が鳴いてゐる。さういふいろ/\な物音を圧し潰さうとするやうに、力強い波濤が程近いところに鳴つてゐる。
「あの月は旧の七月の、本当の盂蘭盆の月だな。」
私はさう思つて、ひとり静かに初秋の夜を楽んでゐたが、いつとなしに、幼い頃の故郷の七夕や盂蘭盆の有様が思ひ出された。この季節は、幼時の追憶のうちでも最も懐しいもので、私の心は深い感化を受けてゐるのである・・・
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うまれて 來る 雀達
著者:新美 南吉 読み手:室 由美子 時間:3分45秒
その 雀は びつこでした。まだ やつと 飛べるやうに なつたばかりの 頃、いたづらな 少年に とらへられて 片足を ひもで 固く 縛られましたため か弱い 足は きづついて しまつたのでした。
その びつこの 雀が 麥畑の 黄く なる 頃 或る 家の 軒に 三つの 卵を うみました。
雀は うれしくて うれしくて、三つの 卵を 胸の 下に ぢつと だきしめて ゐました。
忙しい 蜜蜂が 飛んで 來ました。
「雀さん 今日は」と 蜜蜂は 軒の 巣を のぞいて いひました。
「わたし 卵を うんだの。」と 雀は いつて 胸の 下から 卵を 押し出して 見せました ・・・
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最後の晩餐
著者:フィオナ・マクラウド/松村 みね子 訳 読み手:宮崎 文子 時間:23分3秒
ふいと見た夢のように私は幾度もそれを思い出す。私はその思い出の来る心の青い谿そこを幾度となくのぞき見してみる、まばたきにも、虹のひかりにも、その思い出は消えてしまう。それが私の霊の中から来る翼ある栄光であるか、それとも、幼い日に起った事であったか、よく見極めようとして近よる時――それは、昼のなかに没するあけぼのの色のように、朝日に消える星のように、おちる露のように、消えてしまう。
しかし私は忘れることが出来ない。けっして、けっして、青草の静かさが私の眼の上にある時まで、あの夕方を忘れはしない・・・
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岡の家
著者:鈴木 三重吉 読み手:水谷 ケイコ 時間:11分1秒
岡の上に百姓のお家がありました。家がびんぼうで手つだいの人をやとうことも出来ないので、小さな男の子が、お父さんと一しょにはたらいていました。男の子は、まいにち野へ出たり、こくもつ小屋の中で仕事をしたりして、いちんちじゅう休みなくはたらきました。そして、夕方になるとやっと一時間だけ、かってにあそぶ時間をもらいました。
そのときには、男の子は、いつもきまって、もう一つうしろの岡の上へ出かけました。そこへ上ると、何十町か向うの岡の上に、金の窓のついたお家が見えました。男の子は、まいにち、そのきれいな窓を見にいきました。窓はいつも、しばらくの間きらきらと、まぶしいほど光っています・・・
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橋の上で
著者:小泉 八雲/林田 清明 訳 読み手:福井 慎二 時間:12分43秒
お抱え車夫の平七が、熊本の町の近郊にある有名なお寺院へ連れて行ってくれた。
白川に架かっている、弓のように反った、由緒ありそうな橋まで来たとき、私は平七に橋の上で停まるように言った。この辺りの景色をしばし眺めたいと思ったのである。夏空の下で、電気のような白日の光に溢れんばかりに浸されて、大地の色彩は、ほとんどこの世のものとは思われないほど美しく輝いていた。足下には、浅い川が灰色の石の河床の上を、さざめきながら、また音を立てて流れていて、さまざまな濃淡の新緑の影を映していた・・・
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私の祖父
著者:土田 耕平 読み手:小川 幸香 時間:3分31秒
私は、幼いころのお父さん、お母さん、おばあさんの思ひ出は、はつきりしてをります中に、おぢいさんといふ人を少しも知りません。おぢいさんとはいつても、まだ四十二で亡くなつたのですから、私の生れるずつと先のことです。
このおぢいさんは、大そうえらい人だつたと、私の子供のじぶん、誰彼にいひきかされました。
「なぜえらいのか。」
ときゝますと、
「大そう学問ができたから。」といふ返事をしてくれました。学問ができたからえらい、といふのでは、私は満足することができませんでした・・・
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猫の事務所 〜ある小さな官衙に関する幻想〜
著者:宮沢 賢治 読み手:福井 一恵 時間:24分39秒
軽便鉄道の停車場のちかくに、猫の第六事務所がありました。ここは主に、猫の歴史と地理をしらべるところでした。
書記はみな、短い黒の繻子の服を着て、それに大へんみんなに尊敬されましたから、何かの都合で書記をやめるものがあると、そこらの若い猫は、どれもどれも、みんなそのあとへ入りたがつてばたばたしました。
けれども、この事務所の書記の数はいつもただ四人ときまつてゐましたから、その沢山の中で一番字がうまく詩の読めるものが、一人やつとえらばれるだけでした・・・
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家族といふもの
著者:亀井 勝一郎 読み手:二宮 正博 時間:9分6秒
青年時代に、自我にめざむるにつれて、人は次第に家族から孤立せざるをえないやうになる。自分の友情、恋愛、求道については、両親は必ずしも良き教師ではない。むしろ敵対者としてあらはれる場合が多いであらう。これは家族制度そのものの罪とのみは言へまい。どのやうに自由な家族であつても青年はひとたびは離反するであらう。孤立せんとする精神にとつては、与へられたものはすべて不満足なのだ。これは精神形成の性質から云つて、不可避のことと思はれる。何故なら、精神はその本質上単一性を帯びたもので、いかなる種類の徒党、複数性からも独立せんとする意志であるからだ。そして家族がその最初の抵抗物として意識される。
強い精神ほど孤立する・・・
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仙人
著者:芥川 龍之介 読み手:三田 朱美 時間:11分33秒
皆さん。
私は今大阪にいます、ですから大阪の話をしましょう。
昔、大阪の町へ奉公に来た男がありました。名は何と云ったかわかりません。ただ飯炊奉公に来た男ですから、権助とだけ伝わっています。
権助は口入れ屋の暖簾をくぐると、煙管を啣えていた番頭に、こう口の世話を頼みました。
「番頭さん。私は仙人になりたいのだから、そう云う所へ住みこませて下さい。」
番頭は呆気にとられたように、しばらくは口も利かずにいました・・・
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臨終まで
著者:梶井 久 読み手:宮崎 文子 時間:19分6秒
彼は永年病魔と闘いました。何とかしてその病魔を征服しようと努力しました。私も又彼を助けて、共にその病魔を斃そうと勉めましたが、遂に最後の止めを刺されたのであります。
本年二月二十六日の事です。何だか身体の具合が平常と違ってきて熱の出る時間も変り、痰も出ず、その上何処となく息苦しいと言いますから、早速かかりつけの医師を迎えました。その時、医師の言われるには、これは心臓嚢炎といって、心臓の外部の嚢に故障が出来たのですから、一週間も氷で冷せばよくなりますとのことで、昼夜間断なく冷すことにしました。
其の頃は正午前眼を覚しました。寝かせた儘手水を使わせ、朝食をとらせました・・・
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納豆合戦
著者:菊池 寛 読み手:福井 慎二 時間:14分33秒
一
皆さん、あなた方は、納豆売の声を、聞いたことがありますか。朝寝坊をしないで、早くから眼をさましておられると、朝の六時か七時頃、冬ならば、まだお日様が出ていない薄暗い時分から、
「なっと、なっとう!」と、あわれっぽい節を付けて、売りに来る声を聞くでしょう。もっとも、納豆売は、田舎には余りいないようですから、田舎に住んでいる方は、まだお聞きになったことがないかも知れませんが、東京の町々では毎朝納豆売が、一人や二人は、きっとやって来ます。
私は、どちらかといえば、寝坊ですが、それでも、時々朝まだ暗いうちに、床の中で、眼をさましていると、
「なっと、なっとう!」と、いうあわれっぽい女の納豆売の声を、よく聞きます・・・
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狐のつかい
著者:新美 南吉 読み手:室 由美子 時間:4分21秒
山のなかに、猿や鹿や狼や狐などがいっしょにすんでおりました。
みんなはひとつのあんどんをもっていました。紙ではった四角な小さいあんどんでありました。
夜がくると、みんなはこのあんどんに灯をともしたのでありました。
あるひの夕方、みんなはあんどんの油がもうなくなっていることに気がつきました。
そこでだれかが、村の油屋まで油を買いにゆかねばなりません。さてだれがいったものでしょう。
みんなは村にゆくことがすきではありませんでした。村にはみんなのきらいな猟師と犬がいたからであります・・・
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横綱
著者:太宰 治 読み手:小川 幸香 時間:2分10秒
二、三年前の、都新聞の正月版に、私は横綱男女ノ川に就いて書いたが、ことしは横綱双葉山に就いて少し書きましょう。
私は、角力に就いては何も知らぬのであるが、それでも、横綱というものには無関心でない。或る正直な人から聞いた話であるが、双葉山という男は、必要の 無いことに対しては返辞をしないそうである。お元気ですか。お寒いですね。おいそがしいでしょう。すべて必要の無い言葉である・・・
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質屋の小僧
著者:宇野 浩二 読み手:松岡 初子 時間:23分31秒
私がどんなに質屋の世話になつたかといふ事は、これまで、小説に、随筆に、既にしばしば書いたことである。だが、私だとても、あの暖簾を単独でくぐるやうになる迄には、余程の決心を要した。私が友人を介して質屋の世話になり始めてから、友人なしに私一人でそこの敷居をまたぐやうになつた迄には、少なくとも二年の月日がかかつた。
それは私が二十四歳の秋の末のことであつた。その秋の初の頃、私の出世を待ち兼ねて、私の母が長い間居候をしてゐた大和の知合の家に別れを告げて私を便つて上京して来たのであるが、当時私はただ一文の収入の方法も知らなかつたのであるが、仕様がないので、取敢ず本郷区西片町に小さな借家を見つけて、母と二人で暮しはじめた・・・
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十三年
著者:山川 方夫 読み手:西村 文江 時間:9分24秒
明るい昼すぎの喫茶店で、彼は友人と待ち合わせた。友人はおくれていた。
客のない白い円テーブルが、いくつかつづいている。夏のその時刻は客の数もまばらで、そのせいか、がらんとした店内がよけいひろくみえる。
ふと、彼は、彼をみつめている一つの眼眸に気づいた。生温くなった珈琲にゆっくりと手をのばして、彼は、同じ窓ぎわの、五、六メートル先きのテーブルのその女をみた。
若くはない。女は、そろそろ四十歳に近い年頃に思える。上品な紺いろの明石らしい和服を着て、同じテーブルには、娘だろう、肩をむき出したピンクの服の少女がいる。少女は、ソックスをはいた白い棒のような細くながい脚を、退屈げにぶらぶら動かしている・・・
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玉虫のおばさん
著者:小川 未明 読み手:緒方 朋恵 時間:9分48秒
ある日、春子さんが、久代さんの家へ遊びにまいりますと、
「ねえ、春子さん、きれいなものを見せてあげましょうか。」と、いって、久代さんは、ひきだしの中から、小さなきりの箱を取り出しました。
「この中に、なにが入っているか、あててごらんなさい。」と、笑いながら、いいました。
春子さんは、なんだろうと思いました。いくら頭をかしげてもわかりません。
「わからないわ。」
「きれいなものよ。」と、久代さんは、にっこりしました。
「指輪でしょう。」と、春子さんは、答えました。
「いいえ、そんなものでないの。」
「じゃ、なんでしょう。宝石?」
「宝石より、もっときれいなものよ。」・・・
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死霊
著者:小泉 八雲/田部 隆次 訳 読み手:福井 慎二 時間:6分11秒
越前の国の代官、野本彌治衞門の歿した時、その下役の者共相謀って、その故主人の遺族をだまそうとした、代官の負債の幾分を償却すると云う口実の下に、その家の財宝家具全部を押えた。その上、故主人が無法にも自分の資産の価値以上の債務を契約したように見える偽りの報告書を整えた。この偽りの報告を彼等は宰相に送った、そこで宰相は越前の国から野本の妻子の追放命令を出した。その頃、代官の家族は、たとえ当主の死後でも、何かその人に非行があったときまれば、幾分責任を負わされたものであった・・・
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青空朗読はインターネット上の図書館「青空文庫」の作品を朗読するプロのアナウンサーによる社会貢献活動としてスタートしました。近年は、朗読を学ぶ一般の方々からも作品を提供していただいています。2016年5月に一般社団法人となりました。
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#朗読 #青空文庫 #青空朗読 #アナウンサー
懐中時計
著者:夢野 久作 読み手:畠山 有香 時間:1分4秒
懐中時計が箪笥の向う側へ落ちて一人でチクタクと動いておりました。
鼠が見つけて笑いました。
「馬鹿だなあ。誰も見る者はないのに、何だって動いているんだえ」
「人の見ない時でも動いているから、いつ見られても役に立つのさ」
と懐中時計は答えました。
「人の見ない時だけか、又は人が見ている時だけに働いているものはどちらも泥棒だよ」
鼠は恥かしくなってコソコソと逃げて行きました。
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