大変ご無沙汰しております。医史らじの中村です。
2025年8月にして今年最初の投稿は、医学史の話はお休みし、私自身の近況と、今後の発信についてお話しします。
昨年から始めた二足の草鞋を履いた生活の中で感じたことや、「医史らじ」をこれからどのように続けていくか。
長く聴いてくださっている方にも、最近聴き始めてくださった方にも、一度聞いていただければ幸いです。
堕胎が「必要悪」として認識されていた江戸時代。なぜ幕府はそれを禁止したのか。
中條流、女医師、そして賀川流産科。その違いを読み解きながら、堕胎禁止令に見る江戸社会の息遣いを考察します。
医学と倫理が交錯する幕末を生きた人々の選択に思いを馳せよう。
【参考文献】
/『日本国語大辞典 第二版』小学館、2007年
/内野花(2009)「近世大坂における回生術と産科学」『日本医史学雑誌』日本医史学会,第55巻,pp31-42
/落合恵美子編(2006)『徳川日本のライフコース : 歴史人口学との対話』,ミネルヴァ書房,pp29-59
/沢山美果子(1995)『出産と身体の近世』勁草書房
/東京大学史料編纂所編(1959)『大日本近世史料 市中取締類集一 市中取締之部一』、東京大学出版会
/日置英剛(2010)『新国史大年表 第5巻2 1716~1852』、国書刊行会
/松崎憲三(2000)「堕胎(中絶)・間引きに見る生命観と倫理観 : その民俗文化史的考察」『日本常民文化紀要』成城大学,21号,pp119-175.
江戸幕府が「堕胎御禁止一件」として町奉行に指示した調査は、隠密廻や町名主の報告を経て、堕胎の依頼人と施術者の処罰に関する結論に至る。
今回は、史料を通して堕胎を巡る江戸市中の実態や、幕府が下した処罰の重みを読み解きます。
江戸市中に暮らした人々の姿が浮かび上がる、史料が語る近世史をぜひお楽しみください。
【参考文献】
/『日本国語大辞典 第二版』小学館、2007年
/東京大学史料編纂所編(1959)『大日本近世史料 市中取締類集一 市中取締之部一』、東京大学出版会
/日置英剛(2010)『新国史大年表 第5巻2 1716~1852』、国書刊行会
時は天保。
江戸幕府が堕胎を巡る問題に直面し、女医師や中條流の実態を調査した「堕胎御禁止一件」。
その史料を読み解き、堕胎を巡る医療と倫理、さらに幕府の風紀取締り政策の一端に迫ります。
(全3話)
江戸市中での女医師の役割とは?堕胎を巡る当時の実情とは?命と倫理を巡る幕末の風景をお届けしましょう。
【参考文献】
/『日本国語大辞典 第二版』小学館、2007年
/鈴木昶(2000)『江戸の医療風俗事典』東京堂出版.
/東京大学史料編纂所編(1959)『大日本近世史料 市中取締類集一 市中取締之部一』、東京大学出版会
/日置英剛(2010)『新国史大年表 第5巻2 1716~1852』、国書刊行会.
先週に引き続き、沖縄出身のナカダさんに実体験を伺っています。
よくないことが降りかかったとき、その意味を知りたいと思うのは人類に普遍的な発想なのかもしれないね。
ゲスト:ナカダさん
沖縄出身の20代。中村の元同期であり、現在はオタク仲間。
琉球王国。
関東育ちのアラサーにとっては、独自の伝統と文化を現代に遺す神秘の響きである。
しかし実際のところ、「沖縄のユタ」はどのように現代に存在しているのだろうか。
そんな素朴な好奇心から、その文化の内側にいる沖縄出身の同世代に話を聞いてみました。
ゲスト:ナカダさん
沖縄出身の20代。中村の元同期であり、現在はオタク仲間。
本編で出てきた沖縄語
・フーチバー:ヨモギの一種
・ぬちぐすい:「命の薬」という意味
医療とは、苦痛を抱える人を癒す術だ。
そこに立ち返った時、近代的な社会制度に生きる私たちに"近代科学に基づかない"医療行為が教えてくれること。
それは、人間の営みは多様な在り方に開かれているのだという素朴な事実である。
今回は、西洋近代史を中心に勉強してきた中村が、文化人類学のバックグラウンドを持つmuroさんをゲストに迎え、医療人類学の視点を教えてもらいました。
ゲスト:muroさん(@ryunosukemuro)
ライター・リサーチャー。専攻は文化人類学。九州大学人間環境学府博士後期課程を単位取得退学後、在外公館やベンチャー企業の勤務を経て独立。個人ゼミ「le Tonneau」を主宰。経営者やコンサルタント向けに研修や勉強会を実施したりすることも。Podcast番組「どうせ死ぬ三人」「のらじお」を配信中。
最近は会社を調べて社史を書いたりしている。
なお、中村は絶賛花粉症のため聞き苦しく申し訳ありません。
ある文化では病とされる症状が、別の文化では単なる人間の状態の一つと見なされる。
ある社会では生きている人間が、別の社会では死んでいるかもしれない。
医療行為を人間の営みであるところの"文化"として相対化し、健康をめぐる諸問題に対峙する。
今回は、西洋近代史を中心に勉強してきた中村が、文化人類学のバックグラウンドを持つmuroさんをゲストに迎え、医療人類学の視点を教えてもらいました。
ゲスト:muroさん(@ryunosukemuro)
ライター・リサーチャー。専攻は文化人類学。九州大学人間環境学府博士後期課程を単位取得退学後、在外公館やベンチャー企業の勤務を経て独立。個人ゼミ「le Tonneau」を主宰。経営者やコンサルタント向けに研修や勉強会を実施したりすることも。Podcast番組「どうせ死ぬ三人」「のらじお」を配信中。
最近は会社を調べて社史を書いたりしている。
エストニアの首都タリンには、1422年から営業を続ける欧州最古の薬局があります。その名もRaeapteek。
中世の面影と伝統を残しつつ、現代の観光客向け(?)にオリジナルグッズを販売する遊び心も。
600年もの間、市民の健康の拠り所としてタリンを見守り続けた薬局と薬剤師の姿をお届けします。
【参考文献】 / アン・ルーニー(2014)『医学は歴史をどう変えてきたか:古代の癒やしから近代医学の奇跡まで』東京書籍
/坂井 建雄(2019)『図説 医学の歴史』医学書院
/奥田潤, 川村和美, 大澤匡弘(2020)「北欧エストニアで 1422 年より現存するタリン市会館薬局─ 598 年の歴史─」日本薬史学会, 薬史学雑誌, 55 (2), 210-217
/Raeapteek 公式HP https://raeapteek.ee/en/
/日本薬剤師会「医薬分業とは」https://www.nichiyaku.or.jp/activities/division/about.html (2023/12/25)
/「17 enchanting Christmas markets in Europe for 2019」https://www.europeanbestdestinations.com/christmas-markets/max-res-2024-xmas/european-best-christmas-markets-2019/ (2023/12/25)
ラトビアの医療を支えた医師Pauls Stradinš。彼の遺志を受け継ぐ医療史博物館(Paula Stradiņa medicīnas vēstures muzejs)に行ってきました。
共産主義の支配からの独立を経て、これからの博物館の在り方を模索し続けています。(本編では触れていませんが障がいに関する特別展示もありました。)
しかし大変残念なことにラトビア語が読めなかったので、私の感想を語ります。
本編中で名前が出た人々:パウルス・ストラディンジュ、イリヤ・メチニコフ、ウィリアム・ハーヴェイ、マルチェロ・マルピーギ、ミシェル・セルヴェ、イブン・シーナー、アンドレアス・ヴェサリウス、ルドルフ・フィルヒョウ、ジョゼフ・リスター、イグナーツ・ゼンメルヴァイス
【参考文献】
/坂井 建雄(2019)『図説 医学の歴史』医学書院
/ヴォルフガング・エッカルト(2014)『医学の歴史』東信堂
/Pauls Stradiņš (wikipedia) https://en.wikipedia.org/wiki/Pauls_Stradi%C5%86%C5%A1 (2023/12/17)
/Viesīte (wikipedia) https://en.wikipedia.org/wiki/Vies%C4%ABte (2023/12/17)
/Paula Stradiņa medicīnas vēstures muzejs https://www.mvm.lv/en (2023/12/17)
8月に富山のイタイイタイ病資料館に行ってきたので、そこで学んだことを話していきます。
初めて認定された公害病|身も心も蝕む病|病は"前世の報い"ではなかった
【参考文献】
/イタイイタイ病資料館 常設展示(2023/08/25訪問)
/富山県公式HP「イタイイタイ病とは」https://www.pref.toyama.jp/1291/kurashi/kenkou/iryou/1291/100025/100026.html(2023/09/03)
/読売新聞オンライン「イタイイタイ病、7年ぶり患者認定…従来の判断根拠「骨生検」経ず」https://www.yomiuri.co.jp/national/20220817-OYT1T50055/(2023/09/03)
インスリンの発見以降、糖尿病は”共生できる病"になった。それを裏で支える存在。そして、今向き合うべき課題とは。
製薬企業の存在感|利潤追求と倫理|患者へのスティグマ
【参考文献】
/ギル ポール(2016)『50の事物で知る図説医学の歴史』原書房
/酒井 シヅ(1998)「歴史から見た糖尿病との闘い」糖尿病, 41 巻 2 号 p. 89-93
/坂井 建雄(2019)『図説 医学の歴史』医学書院
/坂本 信夫(1990)「糖尿病と歴史」日農医誌,38巻6号, p.1091~1095
/槇野 博史, 堀田 饒, 大森 安恵, 八木橋 操六(2015)「第 49 回糖尿病学の進歩記録〈世話人特別企画〉歴史で学ぶ糖尿病」, 糖尿病, 58 巻 10 号 p. 741-744
/日本糖尿病学会(2022)『糖尿病治療ガイド2022-2023』文光堂
ついに人類は糖尿病治療の鍵を握るインスリンの抽出に成功。これで一件落着と思いきや…?
研究者の胃がキリキリするであろうエピソードをお届けします。
トロントの奇跡|ノーベル賞受賞をめぐる対立|研究成果が認められるということ
【参考文献】
/ギル ポール(2016)『50の事物で知る図説医学の歴史』原書房
/酒井 シヅ(1998)「歴史から見た糖尿病との闘い」糖尿病, 41 巻 2 号 p. 89-93
/坂井 建雄(2019)『図説 医学の歴史』医学書院
/坂本 信夫(1990)「糖尿病と歴史」日農医誌,38巻6号, p.1091~1095
/佐々木 環, 西松 伸一郎(2022)「世界を変えた科学新発見 11月14日は世界糖尿病デー それは何故か?」川崎医学会誌 一般教養篇, 46巻, p.13-28
/スティーブ・ パーカー(2016)『医療の歴史:穿孔開頭術から幹細胞治療までの1万2千年史』創元社
/槇野 博史, 堀田 饒, 大森 安恵, 八木橋 操六(2015)「第 49 回糖尿病学の進歩記録〈世話人特別企画〉歴史で学ぶ糖尿病」, 糖尿病, 58 巻 10 号 p. 741-744
古くから知られていた糖尿病。実は見え方が違った?古代から近代まで一気に見ていくぞ。
各地の古代文明で描かれた糖尿病|「甘い尿の病気」|学問の発展がもたらす疾患概念の移り変わり
/ギル ポール(2016)『50の事物で知る図説医学の歴史』原書房
/酒井 シヅ(1998)「歴史から見た糖尿病との闘い」糖尿病, 41 巻 2 号 p. 89-93
/坂井 建雄(2019)『図説 医学の歴史』医学書院
/佐々木 環, 西松 伸一郎(2022)「世界を変えた科学新発見 11月14日は世界糖尿病デー それは何故か?」川崎医学会誌 一般教養篇, 46巻, p.13-28
/スティーブ・ パーカー(2016)『医療の歴史:穿孔開頭術から幹細胞治療までの1万2千年史』創元社
/羽賀 達也, 三輪 一真(2006)「日本における病名「糖尿病」の由来について」糖尿病, 49 巻 8 号 p. 633-635
/槇野 博史, 堀田 饒, 大森 安恵, 八木橋 操六(2015)「第 49 回糖尿病学の進歩記録〈世話人特別企画〉歴史で学ぶ糖尿病」, 糖尿病, 58 巻 10 号 p. 741-744
病は、その時代および地域の医療知識をもとに書き残されている。それならば、いまや身近な病のひとつである糖尿病を通して、医療の歴史を見てみようじゃないか。
糖尿病の基礎知識|治療法があるということ|糖尿病史の時代区分
※2:26 誤「6疾病」 正「6事業」
【参考文献】
/ギル ポール(2016)『50の事物で知る図説医学の歴史』原書房
/酒井 シヅ(1998)「歴史から見た糖尿病との闘い」糖尿病, 41 巻 2 号 p. 89-93
/坂井 建雄(2019)『図説 医学の歴史』医学書院
/佐々木 環, 西松 伸一郎(2022)「世界を変えた科学新発見 11月14日は世界糖尿病デー それは何故か?」川崎医学会誌 一般教養篇, 46巻, p.13-28
/槇野 博史, 堀田 饒, 大森 安恵, 八木橋 操六(2015)「第 49 回糖尿病学の進歩記録〈世話人特別企画〉歴史で学ぶ糖尿病」, 糖尿病, 58 巻 10 号 p. 741-744
/日本糖尿病学会「糖尿病ってどんな病気?」http://www.jds.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=2%EF%BC%89(2023/08/15)
『はだしのゲン』は教材に残すべき?負の歴史の資料館はどうあるべき?
そもそも人類は同じ目標を共有することができるのか。
広島出身の親友と共に、戦争の歴史をいかに伝えるのかを話してみました。
*医史らじ番外編
広島市から離れた広島県東部育ちをゲストにお招きして、平和教育のリアルについて聞いてみました。
平和教育を実感した瞬間。広島市とそれ以外の地域における意識の差。
記憶の保存を広島育ちより強く意識している人がいる?
*医史らじ番外編
東京生まれ東京育ちの被爆3世。その半生で感じてきたことを思うままに話してみました。
本編内では言葉にできていませんでしたが、今なお戦禍で大切な人を亡くす悲しみを味わわなければならない家族がいることに、改めて疑問と強い憤りを感じます。
誰もが平和に暮らせる世界が訪れますように。
*医史らじ番外編
【参考文献】
/厚生労働省「被爆者とは」https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/genbaku09/01.html
/友池 敏雄 (2007)「被爆2・3世者の健康への意識について ―特に原爆による遺伝との関連における自己意識の現状についてー」長崎国際大学論叢, (7), p.197 - 204
アーユル・ヴェーダとは患者を全身的に観察の上で診断をつけ、不調を予防し、より包括的な意味での健康長寿を目指す医術。"先進国"におけるセルフケアのイメージはどこから来ているのだろう?
【参考文献】
/坂井 建雄(2019)『図説 医学の歴史』医学書院
/スティーブ・ パーカー(2016)『医療の歴史:穿孔開頭術から幹細胞治療までの1万2千年史』創元社
/ギル ポール(2016)『50の事物で知る図説医学の歴史』原書房
/加瀬澤 雅人(2005)「アーユルヴェーダは誰のものか : 「伝統」医療・知的財産権・国家」日本文化人類学会, 文化人類学 70 (2), 157-176
/加瀬澤 雅人(2006)「現代インドの民族医療:グローバル状況におけるアーユルヴェーダの変容(Abstract_要旨)」京都大学, 博士論文
/加瀬澤 雅人(2009)「「アーユルヴェーダ」をいかに現代に活かすか:インド、アメリカ、日本における実践からの一考察」京都大学東南アジア研究所, Kyoto Working Papers on Area Studies: G-COE Series, 16
○ー○○○○ー○ってセルフケアとか「癒し」とかでたまに聞くけど、現代に残る医学体系としてはかなりのご長寿ってご存じでした?
【参考文献】
/坂井 建雄(2019)『図説 医学の歴史』医学書院
/スティーブ・ パーカー(2016)『医療の歴史:穿孔開頭術から幹細胞治療までの1万2千年史』創元社
/ギル ポール(2016)『50の事物で知る図説医学の歴史』原書房
/加瀬澤 雅人(2009)『「アーユルヴェーダ」をいかに現代に活かすか:インド、アメリカ、日本における実践からの一考察』京都大学東南アジア研究所, Kyoto Working Papers on Area Studies: G-COE Series, 16