
香りは 見えない記憶の手紙。
空気に紛れて届く 誰かの残響。
ドローンと踊る「3人」の名を追いながら、
彼らは匂いの輪郭を探す。
カレーの湯気に、金木犀の風に、
かつての夜と誰かの影が ふと立ち上がる。
シャンプーの匂いが 心の扉を撫で、
お香の煙が 時の層をめくる。
腐る寸前の食べ物に 「まだ生きている」を感じ、
柔軟剤の甘さに 人工の優しさを見る。
香りは、化粧よりも深く、
声よりも正直に、その人を映す。
嫌いな匂いも 誰かの物語。
すれ違う香の粒が 世界を編んでゆく。
一人が席を立ち、
残りの二人が笑う。
それでも部屋の中には まだ香りという記憶が残っていた。
――語り終えたあとに、ようやく気づく。
言葉も、香りも、人も、このように消えていくのだ。
そんな、15分。