今回は2024年に風響社より出版された『土楼〜円い空の下で暮らす福建客家の民族誌』の著者である小林宏至さんにお話を伺いました。インタビュアーは川口幸大さんです。
【著作概要】
本書は土楼という巨大な民間建築に関する民族誌的研究です。著者はそこに2年間暮らし、居住者と15年以上にわたって交流することで民族誌を書き上げました。土楼ってなんでこんなに巨大で変な形をしているのだろう…というのが本書の入り口です。それを明らかにしていく中で、そこで暮らす人びとと建物との関係を紐解くことが必要になってきました。そのため本書は、建物の話が半分(第一部)、そこで暮らす人々の話がもう半分(第二部)となっています。
土楼という建物も、そこに暮らす親族集団も、合理的で美しく「完璧」な理念モデルはありながらも、実際は増改築を繰りかえしたり、人物呼称を変えたりしながら、互いを「更新」しています。その「更新」作業においてタテモノ/ヒトの主体性は同等です。結論部では、この現場レベルでの「更新」の在り方を音律論を交えて解説しました。
インタビューの内容は専門性が高く、気軽に聴けないかもしれません。ただ逆に言えば、漢族を研究対象とする人類学者同士が、普段どんな会話をしているのかというものが如実に再現されております。そういった意味で、メタ的にお楽しみいただければ幸いです。
【ゲスト:小林宏至 プロフィール】
1981年東京都生まれ。専門は社会人類学。客家社会研究。東京学芸大学(教育学部K類アジア研究)卒業。首都大学東京大学院(人文科学研究科)博士前期課程を経て、同大学院(人文科学研究科)博士後期課程満期退学。博士(社会人類学)。日本学術振興会特別研究員PD(東北大学)を経て、現在、山口大学准教授。
【インタビュアー:川口幸大 プロフィール】
東北大学大学院文学研究科・文学部 教授(広域文化学専攻 域際文化学講座 文化人類学分野)。東北大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(文学)。 国立民族学博物館機関研究員を経て、2010年より現職。研究分野は東アジア、特に中国における家族親族、宗教、移動、食など。
今回は2024年に名古屋大学出版会より出版された『在日フィリピン人社会〜1980~2020年代の結婚移民と日系人』の著者である高畑幸さんにお話を伺いました。インタビュアーは和田吾雄彦アンジェロさんです。
※本インタビューの構成・企画において、北田依利さん(東京大学・東京カレッジ・ポストドクトラルフェロー、歴史学)にもご協力いただいております。
【著作概要】バブル期に毎年数万人の流入をみたエンターテイナー世代から、ブラジル人に代わり急増する日系人まで、いまや幅広い世代と領域に広がり日本社会の一部となったフィリピン人たち。外国人労働者の先駆でもある一大エスニック集団の暮らしと語りに密着し、全体像を活き活きと描き出す。
【ゲスト:高畑幸プロフィール】静岡県立大学国際関係学部教授。1969年、大阪生まれ、秋田育ち。大阪外国語大学(現・大阪大学)大学院を経て大阪市立大学大学院文学研究科後期博士課程(社会学専攻)修了。博士(文学)。専門分野は都市社会学、都市エスニシティ、在日外国人問題(特に在日フィリピン人)。静岡県多文化共生審議会委員、焼津市多文化共生推進協議会会長等。フィリピン語の法廷通訳者としても約30年活動している。
researchmap https://researchmap.jp/read0138628
【インタビュアー:和田吾雄彦アンジェロ】1997年、神奈川県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程に在籍中。修士(国際貢献)。専門は社会学(特にジェンダー研究)で、在日フィリピン人女性の社会調査を行っている。
今回は2025年に慶応義塾大学出版会より出版された『植民地朝鮮と「出産の場」〜産婆と胎教の衛生史』の著者である扈素妍さんにお話を伺いました。インタビュアーは長澤裕子さんです。
【著作概要】日本統治下にあった20世紀前半の朝鮮における「出産の場」、とくに産婆や胎教がどのように機能していたか、言説分析を通して明らかにする。「出産」をめぐって日本人の役人、医師、朝鮮人産婆、優生学者などが、新聞・雑誌でさまざまな言説を展開した。「近代の知」が旧弊の「風習」とときに対立し、ときに協力関係を結ぶといった複雑なせめぎあいがあったことを実証的に論じ、出産する女性をとりまく様相を起点に「歴史叙述を女性へ取り戻す」ことを試みる。
【ゲスト:扈素妍プロフィール】京都大学大学文書館特定助教。2011年ソウル市立大学人文学部国史学科卒業。2016年京都大学大学院文学研究科歴史文化学専攻日本史専修修了。2021年京都大学大学院文学研究科歴史文化学専攻日本史専修研究指導認定退学。2023年同大学院同研究科博士号(文学)取得。奈良文化財研究所企画調整部アソシエイトフェローを経て、現在に至る。主要論文に、「植民地朝鮮の出産風習としての胎教と生政治〜『優生学』言説を中心に」(『朝鮮学報』第260巻、2022年)、「植民地朝鮮における出産風習と産婆養成政策」(『史林』第103巻第5号、2020年)など。
【インタビュアー:長澤裕子プロフィール】高麗大学校政治外交学科博士課程終了、博士(政治学)。東京大学大学院総合文化研究科、特任准教授を経て、現在、ソウル大学校アジア研究所、訪問研究員フェロー兼早稲田大学国際和解学研究所、招聘研究員。専門は日米韓外交史。朝鮮半島の分断と政治・文化政策、日韓・日朝国交正常化交渉を研究している。著作に外村大・長澤裕子『<負の遺産>を架け橋に〜文化財から問う日本社会と韓国・朝鮮』(ころから、2024年)など。近刊に、編著『ようこそ韓国・朝鮮世界へ』(昭和堂)、単著『朝鮮の南北分断と日本の主権〜太平洋戦争から対日講和条約締結まで』(ソウル:高麗大学校出版文化院、ハーバードイェンチン研究所出版助成)。
今回は2025年に法政大学出版局より出版された『ILOの対中関与と上海YWCA〜労働と平和の国際機構間関係史1919-1946』の著者である小野坂元さんにお話を伺いました。インタビュアーは鶴見太郎さんです。
【著作概要】第一次世界大戦後に設立された国際労働機関ILO。現状維持的な妥協の産物としての一面もあったが、本書は中国で労働運動が高揚したのをきっかけに変化し始めていく過程を描いた。治外法権の租界があり、女性や児童が劣悪な条件で働く上海で、ILOはなぜ、民間団体YWCAと協力できたのか。日中戦争期の抗日運動の国際化についての新知見をもふまえ、民族・階級・ジェンダーから戦争と平和を考察する。
【ゲスト:小野坂元プロフィール】1989 年新潟県小千谷市生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。博士(学術、2023 年)。現在、早稲田大学現代政治経済研究所・次席研究員。専門は、国際政治史、労働運動史、キリスト教社会主義思想、和解学。本書およびその初出となった論文以外の業績として、"Reconstruction and Resistance: China YWCA during the Sino-Japanese War and Wartime Assemblies of International Organizations," International Association for Reconciliation Studies (IARS) 5th Annual Conference (Assisi Italy: 3 July 2024).(学会報告)
【インタビュアー:鶴見太郎プロフィール】1982年岐阜県神岡町(現飛騨市)生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻准教授・博士(学術)。専門は、歴史社会学、ロシア・ユダヤ人、イスラエル/パレスチナ、エスニシティ・ナショナリズム。主な著書:『ロシア・シオニズムの想像力』(東京大学出版会、2012年)、『イスラエルの起源』(講談社、2020年)、『ユダヤ人の歴史』(中央公論新社、2025年)、From Europe’s East to the Middle East: Israel’s Russian and Polish Lineages(共編著、ペンシルベニア大学出版局、2021年)
今回は2024年に以文社より出版された『ありふれた〈平和都市〉の解体〜広島をめぐる空間論的探求』の著者である仙波希望さんにお話を伺いました。インタビュアーは清水亮さんです。
【著作概要】原子爆弾投下という人類史的悲劇を経験した広島は、なぜ〈平和都市〉を標榜し、体現しようとしたのか。本書は、まさに所与のものとして語られてきた〈平和都市〉としての広島を主題に、その系譜・景観・空間構造を成り立たせてきた存立基盤を解体することで、未だ「問う」べき対象としての都市・広島の姿を明るみに出す。第一部の理論編ではこれまでの広島研究を「記憶」と「復興」の両軸から再審し、ここに見る課題(〈平和都市〉の二分法)を昨今の都市研究の成果を補助線に、本書の課題として位置づける。そこから第二部の事例編では〈平和都市〉化のプロセスを「8月6日」を貫通しながら展開したものとして位置づけなおし、その一つの帰結としての「原爆スラム」の生成と消滅、また〈平和都市〉自体の正統性を問い直す空間的実践としての〈平和塔〉の存在について論じた。
【ゲスト:仙波希望プロフィール】1987年広島県生まれ。札幌大谷大学社会学部地域社会学科准教授。東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程国際社会専攻修了。博士(学術)。専門は都市研究、カルチュラル・スタディーズ。
本書『ありふれた〈平和都市〉の解体』が初の単著となる。主な著書に『惑星都市理論』(共編、以文社、2021年)、『忘却の記憶』(共編、月曜社、2018年)。主な業績に「『平和都市』の『原爆スラム』」(『日本都市社会学会年報』第7回日本都市社会学会若手奨励賞受賞、2016年)。
https://researchmap.jp/nozomu_semba
【インタビュアー:清水亮プロフィール】1991年東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部専任講師。東京大学人文社会系研究科博士課程修了。博士(社会学)。主著に『「予科練」戦友会の社会学〜戦争の記憶のかたち』(新曜社、2022年)、『「軍都」を生きる〜霞ケ浦の生活史1919-1968』(岩波書店、2023年)、『戦争のかけらを集めて〜遠ざかる兵士たちと私たちの歴史実践』(共編著、図書出版みぎわ、2024年)など。その他詳細は、https://researchmap.jp/smzr/
今回は2025年にインパクト出版会より出版された『軍事化される福祉(ウェルフェア)〜米軍統治下沖縄をめぐる「救済」の系譜』の著者である増渕あさ子さんにお話を伺いました。インタビュアーは松田ヒロ子さんです。
【著作概要】本書は、米軍統治下沖縄(1945-1972年)における住民の医療福祉や衛生に関わる制度や言説、人びとの実践を分析対象とし、生活・生命を守り、心身をケアする様々な「福祉(ウェルフェア)」実践が、沖縄を「反共の砦」として軍事要塞化しようとしていた米国の軍事拡張主義・冷戦政策と複雑かつ密接に結びついていた事態を、「軍事化される福祉(militarized welfare)」という言葉で理論化・問題化している。
沖縄戦開始と同時に米軍施政下に置かれた沖縄では、大規模なマラリア防遏を皮切りに、性病・結核・ハンセン病など主に感染症対策を中心とする公衆衛生政策が矢継ぎ早にとられていった。しかし、沖縄での医療衛生政策は、米軍人の健康維持を第一義としたものであり、住民福祉の復興は沖縄の医療者の手にゆだねられた。沖縄における社会政策の不整備は、それを補完する形で、沖縄内外を結ぶ官民による多様な援助活動・救済運動を引き起こす。海外沖縄移民やキリスト教団体、国際機関によるこうした活動は、しばしば米軍当局や日米政府の思惑に絡め取られながらも、統治側も予期しない、領土的境界をこえた人的・物的ネットワークも生み出していた。軍事の論理が優先されたことで沖縄の福祉の現場に生じた〈歪み〉を、様々な力学が輻輳する〈磁場〉として分析することで、沖縄米軍統治の歴史を生命・生活をめぐる政治という最も親密で身体的な次元から再検討することが、本書を貫く問題視座である。
【ゲスト:増渕あさ子プロフィール】トロント大学東アジア研究学部博士課程修了(Ph.D.)。現在、立命館大学産業社会学部准教授。同志社大学〈奄美-沖縄-琉球〉研究センター研究員。専門は歴史社会学、戦後沖縄史、医療史、エスニシティ研究。
主な著作として、“Stamping Out the ‘Nation-Ruining Disease’: Anti-Tuberculosis Campaign in US-Occupied Okinawa”, Social History of Medicine 34 (4), 2021、「公衆衛生看護婦の経験から考える沖縄の戦争と占領」『社会事業史研究』(61号、2022年)、「医療衛生から再考する沖縄米軍占領」歴史学研究会編『日本復帰50年琉球沖縄史の現在地』(東京大学出版会、2024年)。
【インタビュアー:松田ヒロ子プロフィール】神戸学院大学専任教員、ブックラウンジアカデミア事務局
プロフィール詳細→https://researchmap.jp/hirokomatsuda
今回は2025年に晃洋書房より出版された『ハンナ・アーレントと共生の〈場所〉論(トポロジー)〜パレスチナ・ユダヤのバイナショナリズムを再考する』の著者である二井彬緒さんにお話を伺いました。インタビュアーは林大地さんです。
【著作概要】1940年、ハンナ・アーレントは何を思いパレスチナ人とユダヤ人の共存国家論を論じたのか。初期論考が収められた『ユダヤ論集』から『革命について』『エルサレムのアイヒマン』までを分析し、シオニズムへの批判から連邦制の理論が紡がれるまでの洞察を読み直す。〈場所〉を失い難民となった一人の思想家による、他者と共生する〈場所〉の未来像を示す。
【ゲスト:二井彬緒プロフィール】東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻(表象文化論)「人間の安全保障」プログラム博士課程修了。博士(国際貢献)。現在は同プログラム助教。専門は社会思想史・政治思想、ハンナ・アーレント研究。関心はイスラエル・パレスチナ紛争、ユダヤ人問題、難民問題、場所論、ポスト・コロニアリズム。既刊論文・記事として「『倫理的なもの』への地図〜ジュディス・バトラーのパレスチナ/イスラエル論」(『現代思想』2024年2月号)、「〈クレオール〉の声を聴くアーレント思想へ〜ed. by Marilyn Nissim-Sabat and Neil Roberts, Creolizing Hannah Arendt を読む」(『政治思想学会会報』59号、2024年)など。https://researchmap.jp/akio-futai21
【インタビュアー:林大地プロフィール】京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程三年。専攻は20世紀ドイツ思想史。趣味は古本屋めぐり。著書『世界への信頼と希望、そして愛〜アーレント「活動的生」から考える』(みすず書房、2023年)、主な論文に「世界への気遣いとしての活動的生〜ハンナ・アーレント『活動的生』における活動の場所指定の重要性」(『社会システム研究』第25巻、2022年)など。京都大学生協発行の書評誌『綴葉』の元編集長。現在も同誌の編集委員として、毎月書評活動を行なっている。
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今回は2025年に京都大学学術出版会より出版された『コナコーヒーのグローバル・ヒストリー〜太平洋空間の重層的移動史』の著者である飯島真里子さんにお話を伺いました。インタビュアーは松田ヒロ子さんです。
【著作概要】本書は、世界的有名な高品質コーヒーの産地として知られるハワイ島コナから、グローバル・ヒストリーを描き出す試みである。200年近くコナで栽培されてきたコーヒーの歴史には、日英米帝国の植民地主義、アジアやラテンアメリカ地域からの労働移民、スペシャルティ・コーヒーという概念の浸透などグローバルな規模で展開されたヒト・モノ・思想の「移動」が重層的に絡み合っていた。異なる時期・規模・背景のこれらの移動から、日欧米地域やラテンアメリカ地域からコナ、コナからアジアの亜熱帯地域(南洋群島や台湾)やラテンアメリカ地域へと、コナという極めてミクロな地域が、太平洋空間の多方向的移動の結節点となったことが浮き彫りとなる。これにより、産地名によって固定化されてしまった「コナ」コーヒーの認識を、200年という時間軸、太平洋地域という空間軸、越境という移動軸を投入することで深化させ、没背景化された歴史を浮き彫りにする。
【ゲスト:飯島真里子プロフィール】専門は歴史学。上智大学外国語学部卒業後、英国オックスフォー大学にてMPhilとDPhil課程修了。主な業績として、「戦後沖縄における糖業復興〜製糖経験と沖縄ディアスポラの連続性」野入直美編『引揚げエリートと戦後沖縄の再編』(不二出版、2024年)、「二つの帝国と近代糖業〜ハワイと台湾をつなぐ移動者たち」『農業史研究』(55号、2021年)、 “Japanese Diasporas and Coffee Production,” The Oxford Research Encyclopedia for Asian History (2019)などがある。経歴詳細はhttps://researchmap.jp/read0150098を参照のこと。
【インタビュアー:松田ヒロ子プロフィール】神戸学院大学専任教員、ブック・ラウンジ・アカデミア事務局
経歴の詳細→https://researchmap.jp/hirokomatsuda
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今回は2024年に慶應義塾大学出版会より出版された『北朝鮮を解剖する〜政治・経済から芸術・文化まで』(礒﨑敦仁 編著)の著者のお一人である森類臣さんにお話を伺いました。インタビュアーは長澤裕子さんです。
【著作概要】北朝鮮研究は、これまで行われてきた政治・外交・経済分野はもちろんのこと、近年では映画や音楽分野など裾野が広がりつつある。本書は、所属先や出身大学の垣根を超えた第一線の日本人研究者が協同して、同国に対する新たな視座を提供する。北朝鮮の政治・外交・経済・文化を描く。一般教養書と研究書の中間的な役割を担う書籍でありつつ、学生が北朝鮮に関して知るときに手引きとなるであろう。
【ゲスト:森類臣プロフィール】同志社大学大学院社会学研究科メディア学専攻博士後期課程退学、博士(メディア学)。専門は歴史社会学・地域研究(韓国・朝鮮)。主な著作として『北朝鮮の対外関係〜多角的な視角とその接近方法 』(中戸祐夫・森類臣編著 、晃洋書房、2022年)、『韓国ジャーナリズムと言論民主化運動〜『ハンギョレ新聞』をめぐる歴史社会学』(日本経済評論社,2019年、単著)、『韓国ドラマの想像力〜社会学と文化研究からのアプローチ』(平田由紀江・森類臣・山中千恵著、人文書院、2024年)
【インタビュアー:長澤裕子プロフィール】高麗大学大学院政治外交学科修了、博士(政治学)。元東京大学大学院総合文化研究科特任准教授。現在、早稲田大学国際和解学研究所 招聘研究員。専門は日米韓外交史、朝鮮半島の政治と文化政策。著作に外村大・長澤裕子『<負の遺産>を架け橋に〜文化財から問う日本社会と韓国・朝鮮』(ころから、2024年)、「金日成唯一支配体制期の学術定期刊行物と「1965年体制」批判〜「日米韓帝国主義」批判と歴史学・考古学研究」『北朝鮮の対外関係〜多角的な視角とその接近方法 』(中戸祐夫・森類臣編著 、晃洋書房、2022年)など。
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今回は2024年に慶應義塾大学出版会より出版された『女性たちの韓国近現代史〜開国から「キム・ジヨン」まで』の著者である崔誠姫さんにお話を伺いました。インタビュアーは長澤裕子さんです。
【著作概要】朝鮮半島の女性たちは、さまざまな困難に直面してきた。韓国併合、戦争協力と犠牲、南北分断による家族の離散、独裁政権、民主化運動、フェミニズム…現代もなお女性たちは激変する社会の中で、日々憤り、悲しみ、喜び、そして戦っている。開国から現代にいたるまで、朝鮮・韓国の女性はどう生き、どう変わっていったのか。有名・無名のさまざまな女性たちに光を当て、近現代韓国の歴史を描きだす。時代としては19世紀末の朝鮮の開国から始まり、21世紀の「今」までをも扱っている。
【ゲスト:崔誠姫プロフィール】1977年北海道生まれ。2001年東京女子大学文理学部史学科卒業、2006年一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了、2015年一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了、博士(社会学)。一橋大学大学院社会学研究科特別研究員、聖心女子大学ほか非常勤講師・日本女子大学客員准教授を経て、現在大阪産業大学国際学部准教授。専門は、朝鮮近代史、教育史、ジェンダー史。著作に『近代朝鮮の中等教育〜1920~30年代の高等普通学校・女子高等普通学校を中心に』(晃洋書房、2019年)がある。2024年4月~9月NHK連続テレビ小説「虎に翼」朝鮮学生考証/朝鮮文化考証を担当。
【インタビュアー:長澤裕子プロフィール】専門は国際政治・日米韓外交史。高麗大学大学院政治外交学科修了、博士(政治学)。元東京大学大学院総合文化研究科特任准教授。現在、早稲田大学国際和解学研究所・招聘研究員。論文に「金日成唯一支配体制期の学術定期刊行物と「1965年体制」批判」(中戸祐夫・森類臣『北朝鮮の対外関係』晃洋書房、2022年)など。好きな文化財は、開城の恭愍王陵。見たい文化財は、徳源修道院の建物(現在は元山農業総合大学)。残したい文化財は、古代の文化遺蹟、朝鮮王家の神道碑。
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今回は2023年に思文閣出版より出版された『アレクサンダー・フォン・シーボルトと明治日本の広報外交』の著者である堅田智子さんにお話を伺いました。インタビュアーは久野譲太郎さんです。
【著作概要】青木周蔵、伊藤博文、井上馨、井上勝之助。彼ら親独派のかたわらには「もう一人のシーボルト」がいた。
明治政府に外交官として約40年間奉職したアレクサンダー・フォン・シーボルトが外交官人生を賭して取り組んだのは広報外交だった。高い先見性をもち、「〈視覚〉による広報」と「〈文字〉による広報」が両翼をなすシーボルトの広報外交戦略では、ウィーン万博を成功に導き、条約改正や黄禍論との戦いに挑んだ。広報外交を通じ、シーボルトが母国ドイツに発信した明治日本の姿(イメージ)とは、いかなるものだったのか。
本書では、「日本帝国近代史の化身」と表された外交官人生と明治日本にもたらされた広報外交の裏面史を明らかにした。明治日本の「ドイツ化」や「独日関係の黄金時代」の一例としての意義も問うた。
本書はシーボルトに関する世界初の体系的な学術書である。執筆にあたり、マルチリンガル、マルチアーカイヴァル的手法を用い、日独双方に所蔵される外交文書、日記、書簡、ブランデンシュタイン=ツェッペリン家所蔵資料、シーボルト自身が執筆した論文・新聞記事を分析した。
【ゲスト:堅田智子プロフィール】1987年生まれ、東京都出身。上智大学大学院文学研究科史学専攻博士後期課程修了、博士(史学)。関西学院大学教育学部助教。専門は、19世紀から20世紀の世紀転換期における日独関係史、アレクサンダー・フォン・シーボルト研究、広報文化外交。
「アレクサンダー・フォン・シーボルトと黄禍論」(『上智史学』第57号、2012年)により、第6回石橋湛山新人賞受賞。「シーボルト兄弟にとってのウィーン〜日独澳関係史、広報文化外交史の交点として」(『異文化を伝えた人々Ⅱ)「ウィーン万国博覧会後のジャポニスムをめぐって〜『日本古美術展』とシーボルト兄弟寄贈日本コレクション」(『1873年ウィーン万国博覧会』思文閣出版、2022年)「青木周蔵とアレクサンダー・フォン・シーボルト〜『国家を診る医者』を目指した二人の外交官」(『プロイセン気質の日本人』久米美術館、2022年)など。
【インタビュアー:久野譲太郎プロフィール】愛知県出身。同志社大学大学院文学研究科文化史学専攻博士後期課程修了、博士(文化史学)。同志社大学文学部嘱託講師、ハイデルベルク大学客員研究員。専門は、大正・昭和戦前期を中心とした近代日本の思想史。
『恒藤恭の平和主義とナショナリズム〜「世界民」と民族』(晃洋書房、2023年)、「『総力戦体制』下の恒藤法理学〜「統制経済法」理論をめぐって」(『ヒストリア』第231号、2012年)、「恒藤法理学における『新カント派』受容の理路〜『法の理念』をめぐって」(『政治思想研究』第24号、2024年)、『ヴァイマール期ハイデルベルク大学の日本人留学生〜在籍者名簿および現存資料目録』(科学研究費研究報告書、2022年)など。
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今回は2021年に東京大学出版会より出版された『ありのままのイメージ〜スナップ美学と日本写真史』の著者である甲斐義明さんにお話を伺いました。インタビュアーは鶴見太郎さんです。
【著作概要】手持ちの小型カメラで素早く撮影した写真のことを指す「スナップ」が、日本の写真界においてプロ写真家とアマチュア写真家の双方を巻き込みながら、ひとつの独立したジャンルとして形成され、展開してゆく過程について論じた。「人の手によって作り込まれていない」写真に最大の価値を見出す「スナップ美学」が1930年代から現代に至るまでの日本写真史において、ひとつの規範となっていることを明らかにした。
【ゲスト:甲斐義明プロフィール】1981年東京都生まれ。専門は写真史および近現代美術史。ニューヨーク市立大学大学院センター博士課程修了(Ph.D. in Art History)。2013年より新潟大学人文学部准教授。著書に本インタビューの『ありのままのイメージ:スナップ美学と日本写真史』(東京大学出版会、2021年)、『時の宙づり〜生・写真・死』(IZU PHOTO MUSEUM、2010年。ジェフリー・バッチェン/小原真史共著)など、編訳書に『写真の理論』(月曜社、2017年)がある。
【インタビュアー:鶴見太郎プロフィール】1982年岐阜県神岡町(現飛騨市)生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻准教授・博士(学術)。専門は、歴史社会学、ロシア・ユダヤ人、イスラエル/パレスチナ、エスニシティ・ナショナリズム。主な著書:『ロシア・シオニズムの想像力〜ユダヤ人・帝国・パレスチナ』(東京大学出版会、2012年)、『イスラエルの起源〜ロシア・ユダヤ人がつくった国』(講談社、2020年)、From Europe’s East to the Middle East: Israel’s Russian and Polish Lineages(共編著、ペンシルベニア大学出版局、2021年)
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今回は2024年にミネルヴァ書房より出版された『自衛隊と財界人の戦後史〜支援ネットワークの形成とその意味』の著者である中原雅人さんにお話を伺いました。インタビュアーは松田ヒロ子さんです。
【著作概要】1960年代初頭、全国の駐屯地周辺の地域を中心に、民間の自衛隊支援団体である「防衛協会・自衛隊協力会」が設立され始めた。自衛隊支援と防衛思想の普及を主な目的とするこの団体は、1960年代後半にはすでに全国で1,090の協会と約49~60万人の会員を擁するまでに拡大した。本書は、1990年代以降、自衛隊への支持が拡大したという一般的な見方に対して、その「前史」を描くことによって、自衛隊研究に新たな一面を提示するとともに、「日本人にとって自衛隊とは何か」という、戦後日本社会の重要課題を考える材料を提供する。
【ゲスト:中原雅人プロフィール】1990年、兵庫県生まれ。2014年、関西学院大学法学部政治学科卒業。2022年 神戸大学大学院国際協力研究科博士課程修了。博士(政治学)。この間、中華人民共和国恵州学院外国語学部日本語学科講師。平和・安全保障研究所フェロー。現在、神戸大学大学院国際協力研究科助教。関西学院大学国際学部非常勤講師。神戸市外国語大学外国語学部非常勤講師。主要論文に「防衛協会・自衛隊協力会に関する一研究〜1960年代の全国的設立を中心に」(『次世代人文社会研究』第17号、2021年)。「三八豪雪と自衛隊〜一九六〇年代の自衛隊の印象に関する一考察」(『戦争社会学研究』第6号、2022年)などがある。
【インタビュアー:松田ヒロ子プロフィール】ブックラウンジアカデミア事務局・神戸学院大学専任教員
経歴の詳細→https://researchmap.jp/hirokomatsuda
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今回は2024年にさいはて社より出版された『コミュニティ・デザイン新論』(新川達郎監修/川中大輔・山口洋典・弘本由香里編)の共編者のお一人である川中大輔さんにお話を伺いました。インタビュアーは松田ヒロ子さんです。
【著作概要】現代社会の困難=希望をめぐる難問に挑む。政策科学、社会学、減災・人間科学、建築・都市計画学、事業構想学など、バックグラウンドの異なる気鋭の執筆陣が集い、旧来のコミュニティ・デザイン論を捉え直し、アクティブな知として新たに鍛え直すことを目指す。
【ゲスト:川中大輔プロフィール】1980年、神戸生まれ。関西学院大学社会学部卒、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科修士課程修了。(財)大学コンソーシアム京都研究主幹、立命館大学共通教育推進機構嘱託講師(サービスラーニング担当)などを経て、2017年から龍谷大学社会学部専任教員。同大学講師を経て、2021年より准教授。2019-2023年度、放送大学客員准教授。市民の社会参加や社会イノベーション実践に資する教育/研究に取り組んでいる。
実践者として1998年から青少年支援や環境問題、まちづくり、社会事業家支援のNPOで活動し、2003年にシチズンシップ共育企画を設立。現在、同代表。市民教育や協働まちづくり、NPOマネジメントのワークショップを各地で担当。日本シティズンシップ教育フォーラム(J-CEF)事務局や、NPO法人神戸まちづくり研究所理事、こども家庭庁こども・若者参画及び意見反映専門委員会委員なども務める。
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今回は2024年にころからより出版された『〈負の遺産〉を架け橋に〜文化財から問う日本社会と韓国・朝鮮』の共著者のお一人である長澤裕子さんにお話を伺いました。インタビュアーは松田ヒロ子さんです。
【訂正(2024年11月3日)】インタヴューの中で「海外に搬出された朝鮮半島由来の<7割>が日本にある」との発言がありますが<およそ半分>の誤りです。
【著作概要】共著者のそれぞれの研究と東京大学韓国学研究センターによる講義をもとに、韓国・朝鮮から日本へもたされた文化財を切り口に近現代史の関係を問い直す。
「略奪文化財」とも称され、〈負の遺産〉とされてきた朝鮮半島由来の文化財は、ときに紛争の種として疎まれてきた。その経緯を示しつつ、〈負の遺産〉こそが国家間対立を克服する契機を生みだし、市民レベルでの交流によって「架け橋」になりうることを提示する。
具体的には、下記の項目について、歴史学・外交史の側面から解説している。文化財の定義、国外所在韓国文化財のおよそ45%を占める日本所在文化財と過去清算、植民統治期の文化政治、略奪文化財をめぐる日韓間の返還問題、日韓国交正常化交渉と文化財協定、日朝国交正常化交渉、対馬の盗難仏像事件と韓国の大法院(最高裁)判決、韓国文化財法の変遷、台湾の近代化遺産、ドイツ人宣教師の活動、東アジア文化共同体ほか。
※著作概要の一部を加筆・修正いたしました(2024年11月3日)
【ゲスト:長澤裕子プロフィール】専門は国際政治・日米韓外交史。高麗大学大学院政治外交学科終了、博士(政治学)。元東京大学大学院総合文化研究科特任准教授。現在、早稲田大学国際和解学研究所・招聘研究員。論文に「金日成唯一支配体制期の学術定期刊行物と「1965年体制」批判」(中戸祐夫・森類臣『北朝鮮の対外関係』晃洋書房、2022年)など。好きな文化財は、開城の恭愍王陵。見たい文化財は、徳源修道院の建物(現在は元山農業総合大学)。残したい文化財は、古代の文化遺蹟、朝鮮王家の神道碑。
【インタビュアー:松田ヒロ子プロフィール】ブックラウンジアカデミア事務局・神戸学院大学専任教員
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今回は2024年に刀水書房より出版された『第二次世界大戦期東中欧の強制移動のメカニズム』の著者である山本明代さんにお話を伺いました。インタビュアーは鶴見太郎さんです。
【著作概要】本書は、第二次世界大戦期の東中欧で起こった複数の強制移動はいかなる政治的・経済的・社会的要因によって構成・実行され、社会的な影響を与えたのか、その強制移動のメカニズムを解明することを目的とした。そして、この強制移動のメカニズムに帝国主義の統治技法がいかに活用され、この時期の東中欧諸国が目指した国民国家形成に向けて作用し、移動を強いられた人びとがこの事態にいかに対応し、共同体の維持と再建を試みたのか、歴史認識や記憶をめぐる課題や歴史叙述の変容に関連付けて考察した。具体的には、ユダヤ人の強制移送、ソ連への強制連行と強制労働、チェコへの強制連行と強制労働、セーケイ人の移住と難民化、ドイツ系住民の追放、チェコスロヴァキアとハンガリー間の住民交換、実際には実行されなかったルーマニアとハンガリー間の住民交換構想の各事例を取り上げ、これらに関する強制移動の記憶と歴史認識、歴史叙述の変容について考察した。
複数の強制移動の諸事例の分析から、強制移動のメカニズムには、帝国主義的な統治手法である土地の獲得と利用、そのために必要な無権利状態の奴隷労働力の確保とそれを使って戦後の開発と経済発展を目指す諸国家の意図が存在したことが明らかになった。他方、被追放者・被連行者たちは、逃亡や指定された移住先からの再移動を行い、元のローカルな結合、教区などの共同体の紐帯を駆使し、時には民族的アイデンティティを転換して生存のための抵抗を試みた。そして、第二次世界大戦期に東中欧で起こった強制移動の後に個人と地域の負の記憶の痛みは長期にわたって続いたが、語られることがなかった連行と追放の歴史認識を社会が共有するために、歴史研究者のみならず、被追放者、在野の歴史家などを含む市民の広範な試みが必要であった。この強制移動をめぐるパブリック・ヒストリー形成の試みは現在も進行中であり、強制移動の出来事とその解釈をめぐって論争や対立、課題が残されている。
【ゲスト:山本明代プロフィール】静岡県生まれ。2001年千葉大学大学院社会文化科学研究科博士後期課程修了(学術博士)、現在、名古屋市立大学大学院人間文化研究科教授。専門は、西洋史、東欧とアメリカの社会史、移民史、強制移動の歴史。主な著書は『大西洋を越えるハンガリー王国移民〜アメリカにおけるネットワークと共同体の形成』(彩流社、2013年)、『移動がつくる東中欧・バルカン史』(共編書、刀水書房、2017年)、「ハンガリー王国からアメリカ合衆国への移民女性とジェンダー関係の再編」北村暁夫・田中ひかる編『近代ヨーロッパと人の移動』(山川出版社、2020年)、「1956年のハンガリー革命後の難民学生による社会運動」田中ひかる編『社会運動のグローバルな拡散〜創造・実践される思想と運動』(論創社、2023年)
【インタビュアー:鶴見太郎プロフィール】1982年岐阜県神岡町(現飛騨市)生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻准教授・博士(学術)。専門は、歴史社会学、ロシア・ユダヤ人、イスラエル/パレスチナ、エスニシティ・ナショナリズム。主な著書は『ロシア・シオニズムの想像力〜ユダヤ人・帝国・パレスチナ』(東京大学出版会、2012年)、『イスラエルの起源〜ロシア・ユダヤ人がつくった国』(講談社、2020年)、From Europe’s East to the Middle East: Israel’s Russian and Polish Lineages(共編著、ペンシルベニア大学出版局、2021年)
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今回は2024年に法律文化社より出版された『「発見」された朝鮮通信使〜在日朝鮮人歴史家・辛基秀の歴史実践と戦後日本』の著者である山口祐香さんにお話を伺いました。インタビュアーは韓光勲さんです。
【著作概要】近世日本と朝鮮王朝の外交・交流関係を担いながらも半ば忘れられていた朝鮮通信使は、どのように広く知られるようになり、ユネスコ「世界の記憶」へと登録されるに至ったのか。本書では、在日朝鮮人映像作家・民族運動家であり通信使研究家でもあった辛基秀の実践を軸に、様々なマイノリティと連帯する市民運動が隆盛した1970年代以降の日本において、民族差別克服と「日韓友好」の象徴として朝鮮通信使が「発見」される過程を描く。更に、本書の射程は、辛基秀らと関わりを持った多くの日本人市民も含み、過去の歴史を通じて戦後日本社会の人々がいかに連帯や交流の可能性を模索し、ローカルな実践へと繋げていったかを取り上げている。
【ゲスト:山口祐香プロフィール】1993年佐賀県生まれ。九州大学大学院地球社会統合科学府博士課程修了、博士(学術)。専門は歴史社会学、東アジア地域研究、メディア研究。日本学術振興会特別研究員(DC1)、九州大学アジア・オセアニア研究教育機構学術研究員、ソウル大学日本学研究所客員研究員などを経て、現在、日本学術振興会特別研究員PDおよび神戸大学国際協力研究科特命助教。主な論文に「歴史実践としての朝鮮通信使関連文化事業〜韓国側の取り組みを中心に」(『インターカルチュラル』第17号 2019年)、「1970-80年代日本の市民運動史における映画『江戸時代の朝鮮通信使』と上映運動」(『コリアン・スタディーズ』第10号 2022年)、韓国語論文「生活者を見る視角〜辛基秀と『季刊三千里』」(翰林大学校日本学研究所編『内破する国民国家、架橋する東アジア』學古房 2022年)など。近年は芸術実践を通じた多文化共生に関する研究にも関心を広げている。
【インタビュアー:韓光勲プロフィール】1992年大阪市生まれ。在日韓国人3世。2019年 大阪大学大学院国際公共政策研究科博士前期課程修了。修士(国際公共政策)。2019年4月から2022年7月まで毎日新聞記者として働く。2023年3月から約1年間、韓国で留学生活を送った。現在、大阪公立大学大学院文学研究科博士後期課程に在籍。日本学術振興会特別研究員(DC1)。専門は社会学、朝鮮半島地域研究。2019年 大阪大学大学院国際公共政策研究科優秀論文賞受賞。2020年 スマートニュースアワード2020報道部門ベストコンテンツ賞受賞。主要業績として “The Failed Plan: South Korea’s Pursuit of Nuclear Weapons and the U.S. Nonproliferation Policy in the 1970s.” International Public Policy Studies 27(2), 2023、「歴史家・姜徳相の生涯と学問〜在日史学研究序説」『在日朝鮮人史研究』第53号(2023)、飛田雄一・韓光勲「【インタビュー】飛田雄一さん 歴史を心に刻み、石に刻む 〜神戸から日本の植民地主義を問い、朝鮮人の被害を記憶する」『社会運動史研究』第5号(2023)。
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今回は2023年に藤原書店より出版された『グリーンランド〜人文社会科学から照らす極北の島』の編者である高橋美野梨さんにお話を伺いました。インタビュアーは荻上チキさんです。
【著作概要】北緯59度から83度、大部分が北極圏に位置し、面積は日本の約6倍、エスキモーとスカンディナヴィアの人たちとの合流の地であるグリーンランドは、同じ遺伝子ルーツを持つアラスカ、カナダのエスキモーに比して、西(エスキモー)と東(非エスキモー)の世界観とが釣り合いを保ちながら混淆していると評される。
人類学、政治学、歴史学、宗教学、文学など人文社会科学の知見を持ち寄って、その混淆の輪郭をたどり、この世界最大の島における人間の営みを多角的に描き出す、日本で初めての論集。
〈執筆〉井上光子、小澤実、ウルリック・プラム・ガド、須藤孝也、高橋美野梨、中丸禎子、本多俊和(スチュアート ヘンリ) 、イーリャ・ムスリン、ソアン・ルド
【ゲスト:高橋美野梨プロフィール】1982年山梨県生まれ。北海学園大学法学部准教授、デンマーク国際問題研究所Global security and worldviews客員研究員。博士(国際政治経済学)(筑波大学)。専門は国際関係学、デンマーク・グリーンランドを中心とした北極政治。デンマーク政府給費奨学生(グリーンランド大学)、日本学術振興会特別研究員(DC2/PD)、オールボー大学北極研究プラットフォーム客員研究員などを経て現職。主な著書に『自己決定権をめぐる政治学』(明石書店、地域研究コンソーシアム賞登竜賞)、『アイスランド・グリーンランド・北極を知るための65章』(共編著、明石書店)、The Influence of Sub-state Actors on National Security. (Ed. Springer)、Exploring Base Politics. (Eds. Routledge)。
【インタビュアー:荻上チキプロフィール】1981年兵庫県生まれ。評論家、ラジオパーソナリティー。いじめ問題、宗教2世問題、ストーカー規制法改正、薬物報道問題など、幅広いソーシャルアクションに携わる。NPO法人・ストップいじめ!ナビ代表、社会調査支援機構チキラボ代表。ラジオ番組「荻上チキ・Session」(TBSラジオ)メインパーソナリティ。「荻上チキ・Session-22」で、2015年度ギャラクシー賞DJパーソナリティ賞、2016年度ギャラクシー賞大賞を受賞。著書に『未来を作る権利』(NHKブックス)、『災害支援手帖』(木楽舎)、『いじめを生む教室 子どもを守るために知っておきたいデータと知識』(PHP新書)、『もう一人、誰かを好きになったとき〜ポリアモリーのリアル』(新潮社)など多数。 X アカウント : @torakare。
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今回は2022年に吉川弘文館より出版された『日本海軍の志願兵と地域社会』の著者である木村美幸さんにお話を伺いました。インタビュアーは中立悠紀さんです。
【著作概要】本書は、日本海軍の志願兵という存在から、日本海軍と地域社会の関係を考察した研究である。アジア・太平洋戦争期に、青年志願兵がどのようにして「供出」されるようになったのかを、海軍と地域社会双方の力学から考察している。
従来の「軍隊と地域」研究において、未開拓領域だったといえる海軍と地域社会(鎮守府等が所在しなかった地域も含む)の関係を、志願兵という切り口からアプローチしている。日本各地に点在する海軍の兵事関係史料を博捜した上で展開される各論の分析は、詳細にわたり、多角的な視点を提供している。
①なぜ海軍は志願兵を求めたのか、なぜ自発的な志願であることを求めたのか、②どのようにして志願兵を勧誘、「供出」させたのかという観点から、海軍中央と地域社会の動向を丹念に分析し、「軍隊と地域」研究の可能性を広げた。
【ゲスト:木村美幸プロフィール】1992年、東京都生まれ。2020年、名古屋大学大学院人文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。博士(歴史学・名古屋大学)。現在、福井工業高等専門学校一般科目教室助教。専門は歴史学、日本近現代史。主要共著に『日本海軍と近代社会』(吉川弘文館、2023年)、主論文に「1960年代後半における自衛官募集と適格者名簿〜茨城県を事例に」(『軍事史学』59巻3号、2023年12月)など。
【インタビュアー:中立悠紀プロフィール】1990年、京都府生まれ。2018年、九州大学大学院地球社会統合科学府博士後期課程修了。博士(学術・九州大学)。現在、日本学術振興会特別研究員(PD)。専門は歴史学、日本現代史。主論文に「パル判決書研究とパル日本招請〜1950年代~60年代における東京裁判批判論に対する一考察」(『歴史学研究』1048号、2024年5月)など。
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今回は2023年に法政大学出版局より出版された『生きた労働への闘い〜沖縄共同体の限界を問う』の著者であるウェンディ・マツムラさんと、翻訳者のお一人である森亜紀子さんにお話を伺いました。インタビュアーは阿部小涼さんです。
【著作概要】(法政大学出版局HPより引用)琉球処分以後、地元知識人は日本資本に対抗するため「沖縄」という想像の共同体を構想し、近代化を推進した。しかし、農民や職工はこれを拒絶する。宮古島人頭税廃止運動、女性職工の異議申し立て、甘蔗農家の非売同盟、大宜味村村政革新運動。人びとが自分たちの未来を切り拓くために起こした行動をグローバルな反資本主義闘争の一環として読み解き、「生きた労働」を求めた闘いの可能性を探る。
【ゲスト:ウェンディ・マツムラ プロフィール】ニューヨーク大学歴史学部博士課程修了。専攻は近代日本史。現在カリフォルニア州立大学サンディエゴ校(UC San Diego),歴史学部准教授 。主著にThe Limits of Okinawa: Japanese Capitalism, Living Labor, and Theorizations of Community (Durham, North Carolina: Duke University Press, 2015); Waiting for the Cold Moon: Anti-imperialist Struggles in the Heart of Japan's Empire ( (Durham, North Carolina: Duke University Press, 2024)
【ゲスト:森亜紀子プロフィール】同志社大学〈奄美-沖縄-琉球〉研究センター嘱託研究員。土庄町地域おこし協力隊。主な業績として「切り落とされてきた場所・出来事から考える〜呉・沖縄・南洋群島を糸口に」高雄きくえ編『広島 被爆都市からあいだの都市へ〜「ジェンダー×植民地主義 交差点としてのヒロシマ」連続講座論考集』(インパクト出版会、2022年)ほか。
【インタビュアー:阿部小涼プロフィール】琉球大学人文社会学部教授。主な業績として「反戦・非暴力思想と脱植民地化の失敗〜朝鮮戦争の経験の省察から」『世界』No.981(2024年5月)、「死に損ない、生き損ないたちの連帯可能性について」『現代思想』「特集パレスチナから問う〜100年の暴力を考える」Vol.52-2(2024年2月)ほか。
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