
ちょっと更新の間が経ってしまいました
ごめんなさい…
お待たせした分、濃い回です…
次の回はもう少し早めの更新になる予定です!
哲学ポッドキャスト・テツアンドガクは身近なテーマを哲学的に考察してみる番組です。
脱線はしますが基本的には伝統的な哲学の概念やテキストを軸に議論しています。
【今回の話題】
1章の振返りから2章の前半へ
どんな作品を芸術作品というの?というタイトルを回収する話がでてきます
◆前回(第1章)の振返り
・物というものを究明していくことで芸術作品とは何であるかを明らかにしていくのは難しいと分かった
・ただし、その途中でゴッホの絵から「道具」というものがどんなものであるのかを教わった。
・もしかすると、芸術作品とは、「ものごとがなんであるか」をあらわにしてくれるものなのかも?
・芸術家にフォーカスするのではなく、作品そのものにフォーカスしていく
◆ゴッホの農婦の靴の絵があらわすもの=世界と大地という概念。ハイデガーのいう「世界」の定義。
・人間の住んでいる世界、暮らし、生活、営み(例 農婦が暮らしている世界)。
・「人間にとって意味があるもの」「人間と関係性があるもの」。
例えば手段としての道具のように、ある関係性のなかで価値や意味が在る。
・大地=自然、人間と対峙するもの、人間が生活をするベースとなる環境。
例えば、農夫が雨風に対峙して暮らしている環境、土壌、天候。
それ自体では意味や価値を持たないもの。
◆世界と芸術作品の例
・美術館におかれているギリシャ神話の神の形を模した彫像はどうか?
・それは世界が「奪取」された状態。作品(作品が生きている)の世界と作品が切り離されている状態。
・神への信仰があるわけでもないので、作品はただの鑑賞される対象になっている。
・では作品がどういう状態なら「それ自体で安らいでいる、真理を内包している」状態
(その芸術作品の本来の力を発揮できる)なのか?↓
・作品が自らが開く領域(世界)を持っているとき、作品はその力を発揮できる。
◆具体例としてのギリシャの神殿。神殿における「世界」とは?
・建築物の中に神的存在を包み込んでいる。神と人間の区画を分ける。神殿を中心に人の暮らし、信仰、運命みたいなものが立ち上げられる。神殿という存在により信仰やルールや人の在り方がわかってくる。そういった在り方により世界が立ち上がる。
神殿は作品でもあり、神域・聖域でもありその空間を作りだすものという例。
◆一方で神殿における「大地」とは?
・神殿は岩という土台の上に成り立っている。そのことにより岩はより岩らしさを発揮している
・安定的であり、硬く、どっしりとしている。嵐が起きたときには、神殿は嵐から中を守る。
・神殿という建物の存在によって、壁にぶつかる嵐の風の音や振動から、風の強さや雨のしぶきなどが認識される。
・ギリシア人がピュシスと呼んでいたもの。
・「神殿という作品は一つの世界を開示する。一方で世界を大地の上で建て返す。」
・自然物だけの、人工物のない世界で自然を認識することは難しい。
・神殿を立てることにより、自然の姿も見えるようになる。
◆言語作品における「世界」「大地」を作りだす芸術作品の例としては?
・「何が聖なるもので何が聖ならないものか」「何が偉大で卑小か」「何が主人で何が奴隷であるか…」。
・こうした、ある人間集団にとっての基本的な価値観を初めて打ち立てるような言語作品も該当する。
◆本当の芸術作品がもつ、二つの本質動向
・「世界」と「大地」がかならずセット。
・作品が美術館に陳列されている(立てて置かれている)のは、本来的な在り方ではない
・そうではなく、むしろ作品が世界を立ち上げている。
・単に見て聴いて楽しむのではなく、作品の存在によって新しい文化が生まれるようなもの。人の運命やものの考え方が変わってしまうもの。
・ハイデガーのいう芸術作品とは「新しい世界・一定の人々の運命・歴史、生活の営みを立ち上げるようなもの」。
・なんらかの情景を思い出させたり、実際にあった景色を模倣したものではない。
・古い時代の表現であっても、今生きている人々にもその世界が生きていることが観点としては重要。
・例えば万葉集の歌に今読んでも心を動かされる場合に、当時の心象世界が今にも続いている、展開されているということかも。