
9月に仕事を辞めて、「地域おこし協力隊」として、移住・定住の分野を担当している。町の魅力をどう伝えていくかを模索しながら、役場の一角で働く日々。立場は委託の個人事業主だけど、町の人から見れば役場の職員。元々この町で育ったこともあり、「○○地区出身なんです」と話すだけで、初対面でもすぐ打ち解けられるのがありがたい。
東京でのITの仕事は正直、肌に合わなかった。人と関わる時間が少なすぎて、息が詰まっていたと思う。今は地域の人と話す時間が多くて、それだけで日々が少し明るい。まだ始まって1か月も経っていないけれど、3年の任期をどう過ごすかを考えながら、穏やかに走り出している。
さて、本題の映画の話。引っ越して一番ショックだったのは、映画館が遠いこと。東京にいた頃は池袋や東武練馬のイオンシネマに気軽に行けて、思い立ったらその日の夜に映画を観に行く生活だった。でも今は車で15キロ先のイオンモールまで行かないと映画が観られない。それでも観たい作品があれば行く。交通の不便さに負けてたまるかと思う。
今回観たのは、ポール・トーマス・アンダーソン監督の『ワンバトル・アフター・アナザー』。ディカプリオが演じるダメ親父が娘を救うために奔走する話で、笑えるし、スリルもあるし、何より演出がキレてる。ポール・トーマス・アンダーソン健在。点数をつけるなら95〜96点。今年一番の作品といってもいい。
その前に観た『オリバーな犬』がどうにも消化不良だったから、その反動もあって「これだよこれ!」という満足感。やっぱり、配信じゃなくて劇場で観るべき映画ってある。ディカプリオの“冴えない格好悪さ”が最高で、最後は手に汗握った。
群馬に戻ってきてからは、週末のイベントにも積極的に参加している。地域の運動会に出たり、町のイベントに顔を出したり。気づけば、映画を観る時間は減ったけれど、その代わりに人と会って話す時間が増えた。
静かな町で、映画と人のあいだを行ったり来たりするような生活。新しい暮らしは、ゆっくりだけど確実に形になってきている。次はどんな映画を、どんな道を走って観に行こうか。