
今回のテーマは「ブータンのアマンコラ」。ヒマラヤの小国ブータンにあるアマンリゾーツの有名リゾート「アマンコラ」は、5つの谷に点在するロッジを巡りながら滞在する“移動型ラグジュアリーリゾート”として知られています。宿泊者は一箇所にとどまらず、同じガイドとドライバーに伴われながら、自然・文化・宗教・暮らしに触れる旅を体験します。滞在中の食事やアクティビティ、移動までもがすべて統合されたオールインクルーシブの仕組み。「宿泊を点ではなく線として設計する」旅を富裕層に提供しています。
このブータンの仕組みをもとに、山崎が着目したのは“巡礼”という概念。実は「アマンコラ」の“コラ(kora)”とは、ブータン語で“巡礼”を意味します。ラグジュアリーリゾートでありながら「祈り」や「歩く旅」を核にした体験デザインを持っている点に、四国遍路との親和性を感じたといいます。
四国遍路もまた、各地の宿を転々としながら自然と向き合い、人と出会い、自己と世界の関係を見つめ直す旅。しかし現代の歩き遍路には、「宿の減少」や「予約の煩雑さ」といった課題も多く、より体験に集中できる仕組みが求められています。アマンコラのように、同一ブランドの宿泊拠点を巡りながら、ガイドと車が伴走する形で滞在と移動を統合できれば、遍路の本質的な身体性を保ちながらも、より豊かな体験を提供できるのではないか――そんな構想を山崎が語ります。
会話の中では、ブータンの幸福度指標(GNH)や、観光客から徴収される1日100ドルの「サステナブル・デベロップメント・フィー」にも触れ、国全体が“量より質”を貫く観光戦略をどう築いているかも議論。そこから見えてくるのは、観光が「サービス経済」から「経験経済」へ、そして「変容経済」へと移行している流れです。
“温泉を巡る”“スキーや登山で移動する”“四国全域を巡礼として再編集する”——そんな日本ならではの「線でつなぐ旅」の可能性をブータンから考える今回。観光の未来を語るうえで欠かせない、「移動しながら滞在する」という新しい旅の形に迫ります。
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