Microbial food spoilage: impact, causative agents and control strategies
Citation
Nature Reviews Microbiology volume 22, pages528–542 (2024)
論文の要約
本レビューは、食品腐敗に関与する微生物の多様性、その影響、ならびに制御戦略について、最新の科学的知見に基づき総合的に整理したものである。
腐敗の経済的・環境的影響:食品の微生物腐敗は、世界的に年間数億トン規模の食品廃棄につながっており、サプライチェーン、消費者信頼、環境負荷に大きな影響を及ぼしている。
原因微生物の特徴:Pseudomonas spp.、乳酸菌、酵母、カビなど、温度、水分活性、pHに応じてさまざまな腐敗微生物が関与する。食品の種類ごとに優勢な腐敗菌種は異なり、肉類・魚介類・乳製品・野菜などでそれぞれ特異性がある。
メカニズムと腐敗生成物:揮発性有機酸、硫化物、アミン類などの腐敗産物は、悪臭や変色、テクスチャーの劣化を引き起こし、食品の感覚的・衛生的価値を著しく損なう。
制御戦略:低温保存、pH制御、バイオプロテクティブカルチャーの利用、包装技術(改良型大気包装、抗菌フィルム)、バクテリオファージや微生物代謝産物による生物的制御などが紹介されている。化学保存料との併用による相乗効果や、消費者ニーズを踏まえた「クリーンラベル」志向への対応も論じられている。
今後の展望:メタゲノム解析や代謝プロファイリングによる腐敗早期検出、AIによる腐敗予測モデルの構築、サステナブルな制御技術の開発が将来的課題として示されている。
本レビューは、食品腐敗という実用的かつ国際的課題に対し、微生物学・食品科学・環境保全の観点から統合的知見を提供しており、食品産業関係者、品質管理担当者、応用微生物研究者にとって極めて有益な内容となっている。