
元の論文:Continuous or extended vs intermittent infusions of beta-lactam antibiotics in ICU patients with pneumonia: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials
Citation:Antimicrob Agents Chemother. 2025
論文の要約
このシステマティックレビューとメタ解析は、ICUに入院した肺炎患者におけるβ-ラクタム系抗菌薬の投与方法(持続点滴や延長点滴 vs 標準的な間欠投与)を比較したものです。対象は12件のRCT、計1,049人でした。
◯ 主要アウトカム
死亡率:延長/持続投与群で低い傾向はあるが有意差なし(RR 0.79, 95%CI 0.59–1.07)。
臨床的治癒率:延長/持続投与群でやや高いが有意差なし(RR 1.09, 95%CI 0.99–1.21)。
微生物学的治癒率:延長/持続投与群でやや高いが有意差なし(RR 1.09, 95%CI 0.85–1.41)。
有害事象:両群で差なし(RR 1.07, 95%CI 0.81–1.42)。
◯ ICU滞在日数
5件のRCTを統合した解析では、延長/持続投与群でICU滞在日数が有意に短縮(平均−2.18日、95%CI −3.09〜−1.27)。特に延長投与サブグループで有意差あり。
◯ サブグループ解析
持続投与:死亡率・臨床治癒率で数値上の改善はあるが有意差なし。ICU滞在日数も差なし。
延長投与:死亡率・治癒率は有意差なしだが、ICU滞在日数短縮が認められた。
◯ 考察
持続または延長投与によって薬剤曝露(%fT>MIC)は改善し、理論的には有効性が高まるとされるが、今回のRCT統合解析では臨床アウトカム(死亡率や治癒率)に統計的有意差は確認されなかった。ただしICU滞在日数の短縮という実臨床に意味のある改善が見られた。
◯ 限界
研究数とサンプルサイズが比較的小規模。
収録されたRCTの一部は2000年代初期のもので、抗菌薬使用パターンや耐性菌疫学が現在と異なる。
死亡率や治癒率に関しては、より大規模なRCTが必要とされる。
◯ 結論
ICU肺炎患者におけるβ-ラクタム抗菌薬の延長または持続投与は、死亡率や治癒率には有意な差を示さなかったが、ICU滞在期間を短縮する効果があった。今後は大規模多施設RCTによる検証が必要である。
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