
元の論文:Invasive Group A Streptococcal Infections in 10 US States
Citation:JAMA. 2025;333(17):1498–1507
論文の要約
この研究は、米国10州における侵襲性A群レンサ球菌(GAS)感染症の発生動向を2013〜2022年の10年間にわたり解析したものです。
◯ 発生状況
21,312例が確認され、1,981人が死亡。致死率は約9%。
発生率は2013年の人口10万人あたり3.6件から2022年には8.2件に増加。
最も高い発生率は65歳以上であったが、18〜64歳成人の増加幅が最大。
アメリカ先住民やアラスカ先住民、ホームレス、注射薬使用者、長期ケア施設入所者で発生率が著しく高かった。
◯ 小児例
年間発生率は0.6〜2.1/10万人で安定。
コロナ禍(2019〜2021年)には73%減少。
2歳未満で最も高率(3.7/10万人)、死亡率は全体で2.7%。
◯ 成人例
65歳以上では9.1→15.2/10万人、18〜64歳では3.2→8.7/10万人へ増加。
高齢になるほど死亡率は上昇し、85歳以上では21.9%。
アメリカ先住民成人の発生率は39.0/10万人と白人(10.9/10万人)より著しく高かった。
◯ 臨床像
成人では蜂窩織炎に菌血症を伴う症例が最多(44.6%)。
敗血症性ショック(19.2%)、菌血症のみ(18.0%)、肺炎(13.4%)なども多い。
最も致死率が高いのは菌血症や中毒性ショック症候群(19.5%)、壊死性筋膜炎(17.8%)、肺炎(15.7%)。
◯ リスク因子と基礎疾患
成人の93%が1つ以上の基礎疾患を有していた。肥満(36.2%)、喫煙(33.4%)、糖尿病(29.9%)、皮膚損傷(28.7%)が主要因。
ホームレスでは喫煙(66.8%)、皮膚損傷(46%)が多く、注射薬使用者では皮膚損傷(59.6%)、C型肝炎(37%)が多かった。
◯ 菌株と耐性
18,358株でemm型解析を実施。従来少なかった型(43, 49, 60, 81, 83など)が増加し、2022年には26.9%を占めた。
マクロライドおよびクリンダマイシンに対する非感受性は2013年の12.7%から2022年には33.1%に増加。
β-ラクタム系およびバンコマイシンには全株が感受性を保持。
◯ 意義
侵襲性GAS感染は10年間で2倍以上に増加し、特に社会的弱者や基礎疾患を持つ人々で著しい。耐性菌の増加や新しいemm型の拡大も確認され、ワクチン未開発の現状では、監視強化とリスク群への予防策が急務である。
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