
元の論文:Herpes zoster incidence in adults aged ≥20 years in Finland, 2015 to 2023: a population-based register study
Citation:Euro Surveill. 2025;30(35):2500077. doi:10.2807/1560-7917.ES.2025.30.35.2500077
論文の要約
この研究は、フィンランドにおける成人の帯状疱疹(herpes zoster, HZ)の発生率を、全国規模のレジスターデータを用いて9年間にわたり調べたものです。
◯ 規模と方法
2015〜2023年に20歳以上の全住民を対象に、医療記録や処方データを統合して解析しました。合計22万例を超えるHZ症例が確認されました。
◯ 年齢と性別の違い
発症率は加齢とともに上昇し、特に60歳以降に急増しました。女性の発症率は男性よりも一貫して高く、2023年の85歳以上では1,000人あたり13件を超えました。
◯ 生涯リスク
85歳までに帯状疱疹を経験する確率は42%に達し、在宅高齢者を基に推計すると最大46%でした(図3, p.6)。
◯ 入院例
65歳未満では1%未満が入院を要しましたが、85歳以上では7%以上が入院しており、加齢とともに重症化リスクが高まっていました(表2, p.7)。
◯ 介護環境による差
在宅で生活している高齢者では発症率が高く、施設入所者では逆に報告が過少になる傾向が見られました。これは施設内の診断や報告が十分反映されていない可能性を示しています。
◯ 公衆衛生への示唆
フィンランドではまだ帯状疱疹ワクチンが定期接種に導入されていません。本研究はワクチン導入の費用対効果を評価するうえで基盤となる重要な疫学データを提供しています。
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