【積み重ねの成果】
サムエルはイスラエルの宗教界の指導者として人々の尊敬を集めるようになりますが、当時それは、同時に政治的社会的指導者でもあったのです。サムエルは、イスラエルの歴史の中であらわれてくる数多くのすぐれた預言者たちの中で、決してずばぬけていた存在ではありません。しかし、彼は自分の人生での責任を一つひとつ忠実に成功させていくタイプであったのです。
その当時、イスラエル人とペリシテ人との戦いが激化して、イスラエルは敗戦の色が濃くなって来るのです。逆にイスラエル民族にとって、民族の生命ともいうべき、主の契約の箱といわれるモーセの十戒を入れてある箱が、敵軍の手に渡るという悲しむべき状況になってしまいました。
こんなとき、老師エリが死に、代わってサムエルが指導者になったのです。自らの手で獲得した指導者の立場ではなくて、嗣業として指導者の権利を手にしたサムエルが、どのようにして驚くべき影響力をもつようになったかは明らかではありません。ですが、考えられることは、若い日に、老師エリのところで、夜中に呼びかける声に、飛び起きて「はい、ここにおります」とエリのもとに走った素直さと純真さ。また、老師に対する細かい配慮、鋭い判断力。それらに加えて、神への絶対的信頼、燃える信仰にもとづいた勇気は、来るべき出来事を予期して悟る預言者というより、直面する現実を見つめ、神のことばを自分へのことばとして悟り、警告する事をむしろ本質として活躍したのです。
こうしたサムエルであればこそ、多くの問題を抱えたイスラエルを統合するために、サウルを発見して王とし、王国を形成するに到らせる陰の力となりえたのです。
サムエルの指導者としての手腕は、彼の信念を語る勇気によって遺憾なく発揮されていると思われるのです。
周囲がどのような雑音を立てても、迷うことなく一人の王を選び出していくということの重大な責任は、凡人にできることではありません。しかし、サムエルはこのことを、彼の中に与えられていた信仰にもとづく信念によってやり通した事は、容易にうなずける事なのです。
サムエルの燃える使命感3