
アトピー性皮膚炎は、小児から成人まで、多くの患者さんやご家族のQOL(生活の質)に深く関わる慢性疾患です。特に治りにくい「難治性の痒み」に悩まされ、掻くことをやめられない患者さんも多く、医師としても頭を抱えるテーマではないでしょうか。
今回の「いなか医師の勉強ノート」では、2024年に改訂されたばかりの「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」を深掘りします。最新の知見に基づき、皮膚のバリア機能の異常や、痒みを引き起こす2型炎症のメカニズムを楽しく学びながら、外用薬や生物学的製剤など、進化した最新の治療戦略を対話形式で分かりやすく解説します。日常診療で遭遇する「この患者さん、どうしたらいい?」という疑問に、EBM(根拠に基づく医療)の視点から答えを探していきます。
この文献は、アトピー性皮膚炎(AD)の診療に関わるすべての医師・医療従事者を対象に作成された「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」の最新版です。本ガイドラインは、2021年版以降に発表された国内外の新しい知見を加えて作成されており、EBMに基づいた治療方針や目安が示されています。ADは瘙痒を主病変とし、増悪と軽快を繰り返す多病因性の慢性疾患であり、皮膚バリア機能の異常と2型炎症を中心とした複雑な病態形成が関与しています。
治療の目標は、症状を軽微な状態に抑え、日常生活に支障がない状態を維持することとされています。
治療戦略では、正確な診断と重症度評価に基づき、抗炎症外用薬(ステロイド、タクロリムス、デルゴシチニブ、ジファミラストなど)や全身療法(JAK阻害内服薬、生物学的製剤)を適切に選択し、寛解導入と寛解維持を目指すことが重視されています。また、寛解維持には、保湿剤によるスキンケア継続や、炎症が治まった皮膚にも間欠的に抗炎症外用薬を塗布するプロアクティブ療法が有用であるとされています。
佐伯秀久, 大矢幸弘, 荒川浩一, 市山進, 勝沼俊雄, 加藤則人, et al. アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2024. 日皮会誌. 2024;134(11):2741-2843.
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