
『アメリカの新右翼』は、戦後アメリカにおける保守思想の変遷を多層的に辿りながら、今日の右派運動の台頭を位置づけようとする本でした。
ベルの「利益集約」原理の議論に象徴されるように、リベラリズムが掲げてきた平等や自由は、必ずしも万人に等しく開かれてきたわけではなく、むしろ特定の階級的利益に沿うかたちで調整されてきたことが示されます。
そうした構造的矛盾が、ポストリベラル右派の出現につながり、古典的自由主義そのものを疑う潮流が現れた点は、従来の「保守対リベラル」という単純な対立軸では捉えきれない変化でした。特に第三のニューライトの台頭は、トランプ現象を単なる一過的な政治現象としてではなく、思想的基盤の再編として理解させます。
日本に暮らす私にとっても、この「右派の振り子運動」は既視感を伴うものであり、社会は理念の極を行き来しながら編まれていくのだと実感しました。
同時に、イシケンさんの『カウンターエリート』と併読することで、アメリカ右派の流れをグローバルな文脈の中でより立体的に捉えられる一冊だったと思います。おすすめ。