
11月4日、Perplexityは公式ブログで「Bullying is Not Innovation(いじめはイノベーションではない)」と題した声明を公表し、Amazonから“CometがAmazon上で買い物を代行する行為を止めよ”という攻撃的な法的通告を受け取ったと主張しました。Perplexityは、Cometは利用者の端末内に保存された認証情報で本人の代理として操作する“ユーザーエージェント”であり、プラットフォームがそれを一律に排除するのはユーザーの選択権を奪うものだと反論しています。声明内では、Jassy氏の発言を引用しつつ“広告やアップセルを優先している”とAmazonを批判しました。
報道各社もこの応酬を追いました。ロイターは、PerplexityがAmazonからの法的要請を受けたとする事実関係を伝えつつ、Amazon側は第三者ツールが顧客体験を損なう懸念や、サイトの利用規約順守を求めていると反論していると報じています。ブルームバーグも“差止め要求(cease-and-desist)”の送付を確認する関係者情報を掲載し、CometがAmazon上での自動購入を可能にしている点が争点だと整理しました。
テック系メディアは、今回の火種を“AIブラウザ×EC”の主導権争いとして位置づけています。The Vergeは、Amazonが繰り返し停止要請を出し、直近で法的通告に踏み切った経緯を指摘。ヤフー系の配信も、Perplexity側が“いじめ(bullying)”とまで表現した強い物言いを紹介しつつ、Amazonは原則として外部アプリに対し透明性とプラットフォームのルール順守を求めている、と両論併記で伝えました。
技術と法務の境界も論点です。Perplexityは“ユーザーエージェント=本人と同等の権限で動く代理人”でありボットやスクレイパーとは違う、と定義。対してAmazonは、データマイニングや自動化ツールの利用を禁じる規約に照らして不適切だと主張していると報じられています。どこまでが“正当な本人代理”で、どこからが“無断自動化”なのか──AIが“労働”を担い始めた今、線引きが実務上の課題として露わになりました。
産業的な意味合いは重いでしょう。ECは広告と検索の最適化で成長してきましたが、エージェント型AIは“広告を経由せず、最短で買う”行動を増やし得ます。プラットフォーム側のマネタイズと、ユーザーの“任せる体験”のどちらを優先するのか。Perplexityは“ユーザーのためのエージェント”を掲げ、Amazonは“顧客体験の統制と規約順守”を前面に出す。今回の衝突は、その価値観のぶつかり合いを象徴しています。
実務の観点では、企業の皆さんに二点の含意があります。第一に、サイト側は“良質な代理アクセス”と“無断自動化”をどう区別し、APIやパートナー制度にどう収めるかの設計が避けられません。第二に、ユーザー企業は“誰のために動くエージェントか”を見極め、広告・検索経由以外の購買動線が本格化する前提で、商品情報や在庫・価格の提供面を整える必要があります。今回の件は、エージェント時代の“流通OS”を誰が握るかという、次のゲームの開幕宣言でもあるのです。