
Anthropicは10月29日、日本での事業拡大の節目となる東京オフィスの開設を発表しました。アモデイCEOは来日中に高市首相と面会し、与党のデジタル本部でも講演。さらに日本AIセーフティ・インスティテュート(AISI)と、AIの評価手法や動向監視で協力する覚書(MoC)に署名しました。安全と評価を軸に、政府・企業・文化機関との関係を太くする狙いがにじみます。
評価の国際連携も具体化しています。Anthropicは米国のAI標準化機関CAISIや英国のAI Security Instituteと協働を拡大し、2024年11月には両機関がClaude 3.5 Sonnetの共同評価を実施。国境をまたいだ「共通ものさし」づくりに、日本のAISIとのタッグが加わる格好です。
一方、現場導入の熱も増しています。同社の「Economic Index」では日本のAI採用度が世界上位25%に入り、共同作業や文章編集など“人の判断を補う用途”が広がっていると指摘。国内では楽天が自律型のコーディング案件にClaudeを用い、野村総研は文書解析の所要時間を“時間から分へ”、パナソニックは業務とコンシューマの両面で統合、クラスメソッドはある案件でコードの99%をClaude Codeが生成したと紹介されました。今週は東京で初の「Builder Summit」も開催し、150超のスタートアップと開発者が集うなど、APACの年間ランレートは“この一年で10倍超”と手応えを示します。
文化面の連携も特徴的です。森美術館との提携を長期化し、12月3日開幕の「六本木クロッシング2025」や今後のプログラムに協働で関わると発表。AIを社会に根づかせるうえで、技術と芸術を橋渡しする取り組みを前面に出しています。
足元の日本市場に合わせた配慮も打ち出されました。日本語の敬語や文化文脈への最適化、データ・レジデンシーやコンプライアンスへの対応強化など、企業導入のハードルに直結する論点で方針を明確化。特に国内データ滞留の運用選択肢は、規制産業や大企業の安心材料になりそうです。
最後に拠点戦略です。東京チームの採用を広げつつ、今後数カ月でソウルとバンガロールにも同様のアプローチを展開する計画。安全評価の国際標準づくり、企業での具体ユースケース創出、文化機関との協働という“三本柱”をアジアで横展開していく構想が示されました。