
10月23日、OpenAIはChatGPTに「Company Knowledge」を導入しました。対象はBusiness、Enterprise、Eduの各プラン。Slack、SharePoint、Google Drive、GitHubなど社内の分散情報を横断し、会話の中で“自社固有の文脈に沿った答え”を提示します。回答には必ず出典が示され、どの文書やチケットから引用したのかをその場でたどれるのが特徴です。基盤には複数ソースを見比べて整合を取るよう訓練されたGPT-5のバージョンが使われています。
使い方はシンプルで、メッセージ入力欄の「Company knowledge」を有効化し、初回に自分の業務アプリを接続すれば準備完了。以後はサイドバーで“いま何を見に行っているか”が可視化され、完成した回答には参照元のスニペットとリンクが並びます。営業の定例に向けたブリーフ作成や、製品リリース後の顧客フィードバック集約と次アクションの提案など、意思決定に必要な断片情報を一つの答えに束ねる設計です。
企業導入で気になるのは統制と安全性です。Company Knowledgeは既存の閲覧権限を尊重し、ユーザーが見られる範囲だけを参照。SSOやSCIM、IP許可リストといった管理機能に加え、Enterprise/EduではEnterprise Compliance APIで会話ログやメタデータを取得し、eDiscoveryや監査・規制対応に活用できます。
連携まわりは“コネクタ”が鍵です。管理者は利用可能なコネクタを制御でき、ユーザーは自分のアカウントで安全に接続。社内ドキュメントを検索・要約して回答へ引用する運用が標準になってきました。なお、GitHubやGoogle Driveのように必要情報を自動同期して回答品質を高める“Synced Connectors”も用意されています。
現時点の制約も明示されています。Company Knowledgeをオンにしている間は、ChatGPTのWeb検索やグラフ作成、画像生成などは使えません(同じ会話でオフに切り替えて継続可能)。また、導入初週にはAsana、GitLab Issues、ClickUpなどのコネクタも順次追加されると案内されています。実務では“まず社内の一次情報で正確に把握し、必要に応じて外部情報に広げる”という、自然なワークフローが取りやすくなりそうです。
総じて、Company Knowledgeは「社内の点在情報を、根拠つきで“いまの全体像”にまとめるアシスタント」を目指す機能です。プロジェクトの温度感が人やツールごとにズレやすい時代に、時系列や出典、権限をきちんと扱いながら意思決定を前に進める──この“実務ど真ん中”の課題に、ChatGPTが正面から踏み込んできた、と言えるでしょう。