
10月22日、Baiduはスイスの公共交通事業者PostBusと提携し、東部スイスでロボタクシー「Apollo Go」の実証を行うと発表しました。まず2025年12月に安全ドライバー同乗でのパイロット走行を開始し、2026年には無人試験へ段階移行、遅くとも2027年第1四半期までに定常運行を目指します。対象エリアはザンクトガレン州とアッペンツェル両州(アウサーローデン/イナー・ローデン)で、サービス名は「AmiGo」。座席は最大4名、相乗りにも対応する計画です。今回の枠組みは、州政府に加えて連邦運輸局、連邦道路局、TCS(スイス自動車クラブ)からの支援も得ているとされています。
車両はBaiduの最新EV「RT6」。ステアリングは取り外し可能で、定常運行の段階では“ハンドル無し”の車両として一般提供を狙うと報じられています。これが実現すれば、世界でも珍しい形での公道ロボタクシー提供となり、欧州の受容性を占う試金石になりそうです。
このタイムラインを後押しするのが制度面の整備です。スイスでは2025年3月1日に「自動運転に関するオーディナンス」が施行され、限定条件下での自動運転走行やパイロット運行の要件が明確化されました。公道での自動運転実証に早くから取り組んできた同国において、今回のAmiGoは“公共交通とオンデマンド自動運転の組み合わせ”という新たなユースケースを検証する位置づけになります。
Baidu側の狙いは海外展開の本格化です。同社はすでに中東や香港などでの運用実績を積み、累計の完全無人車両数や提供都市数、走行距離の拡大をアピールしています。スイスでの実証は欧州での初の大規模展開となり、公共交通オペレーターと連携して“路線と配車の間”を埋める移動手段としての妥当性を示せるかが焦点です。
振り返ると、今年5月の時点では「スイスでのテスト計画」は報道ベースにとどまり、PostBus側は正式な提携は未定としていました。そこから制度整備と実務協議が進み、今回の正式発表に至った流れです。中国発ロボタクシーの欧州進出は、各国の受容性や安全要件、データガバナンスを巡る議論を伴いますが、公共交通と組むスイスモデルは「まずは限定地域で公共インフラの一部として評価する」という手堅い道筋と言えます。