
「Anniversary」は、大学生活最後の春を迎えた二人が、偶然の出会いをきっかけに心を通わせていく物語です。卒業を間近に控えた彼女と彼、それぞれが未来に向けた夢や不安を抱えながらも、大切な「今」を紡いでいく姿を描きました。
今回は、インテリアブランド「IROTTA CHIC」のきらめく世界を舞台に、二人が共有する特別な瞬間を綴っています。家具やアートに囲まれた空間が、彼女の心にどんな変化をもたらすのか——ぜひ、彼女の目線で楽しんでください。そして、最後に待ち受けるサプライズの瞬間、あなたも一緒に驚いていただけたら嬉しいです。
【登場人物】
・彼女(21歳)・・・女子大学4年生。モダンダンス部に所属。自主講演を中心として幅広く活動中。ダンスと同時に声優の勉強も独学で始め将来の道に悩んでいる。誕生日は3月(CV:桑木栄美里)
・彼(21歳)・・・大学4年生。野生生物研究会。彼女とは彼女が通う女子大の大学祭で知り合った。月1回の野外観察と彼女の合宿が重なった。誕生日は彼女と同じく3月(CV:日比野正裕)
【Story〜「Anniversary/IROTTA CHIC/前編」】
<シーン1/コテージ>
(SE〜森の小鳥ー冬の鳥/シジュウカラやヤマガラなど)
(SE〜ドアを何度もノックする音)
彼女: 鳥のさえずりしか聞こえない静かな森。
私たちのコテージ周辺に不審者出没の情報がとびこんできた。
◾️BGM/houseparty-347242533.wav
うそでしょ・・・
冬眠から目覚めたクマじゃないの。
いや、そっちの方が怖いか。
私は、女子大の舞踊教育学コース4年生。
モダンダンス部の友だちと小旅行に来ている。
10月の自主公演、11月の大学祭と、大学生活最後の年を満喫した。
いまは卒業を来月に控えて友だちとの思い出作り。
こんなところに不審者?
私は震えながら、部屋の戸締りを確認する。
そういえば彼は?
確か、この近くでサークルの野外活動をしていたんじゃないかしら。
まさか、不審者って彼のことじゃ・・・
なわけないか。
私と同じ市内で理系の大学に通う、3年生。
彼と私はうちの大学祭で知り合った。
<シーン2/大学祭〜フランクフルト屋台>
女子大の学祭名物、フランクフルト屋台。
私は給仕をしながらお客さんのリクエストでダンスを踊る。
なのに、そんな私には目もくれずに
夢中でフランクフルトを食べ続ける彼。
その食べっぷりが面白くてじっと覗き込んでしまった。
彼は、
彼: 「僕の顔になにかついていますか?」
彼女: とつぶやき、その言葉もツボにはまって
笑いが止まらなくなっちゃったんだ。
結局、笑い過ぎたお詫びに私から彼をお茶に誘い、
それからたま〜に連絡するようになって今に至る。
その彼も野生生物研究会の活動でこの森に来ているはずだ。
といっても、今年の1月以来彼の顔は見ていない。
就職先の研修やら卒業論文やらで忙しく走り回っている。
こんなときなのに、彼と最後に会った日のことを思い出してしまう。
あれは・・・
初詣のあとに立ち寄ったインテリアショップ。
<シーン3/インテリアショップ(IROTTA CHICコーナー)>
(SE〜インテリアショップのガヤ)
奥に囲まれたコーナーへ彼が吸い込まれていった。
彼: 「ちょっと、こっち来てよ」
◾️BGM/after-all-347727614.wav
彼女: 「なあに?」
彼: 「なんか、このエリア、煌めいてないか」
彼女: 「え?・・・わあ〜」
彼女: そこは白とピンクを基調にした、プリンセス系のお部屋。
シャビーシックなピンクで彩られた壁紙とラグマット。
ラメを散りばめた白いダイニング、ソファ、ロッキングチェア、ベッド。
彼女: 「まるでお城に住んでいる、お姫様のお部屋みたい」
彼: 「はは、さすが声優を目指しているだけあって、表現力が豊か」
彼女: 「眠っている間に異世界召喚されて、こんなお部屋で目覚めたい」
彼: 「出たな、異世界召喚アニメフェチ」
彼女: 「だってやっぱり憧れちゃうもん」
彼: 「まあ、僕はこっちの部屋かな」
彼女: 「うわ、楽しそう」
彼: 「この巨大なホワイトタイガーのぬいぐるみと一緒に
カラフルなソファで寝転びたいな」
彼女: 「ふふ、あなたらしい」
彼: 「ゴリラとかバイクのオブジェもあるんだよ(ぜ)」
彼女: 「おもしろ〜い」
彼: 「なんか、みんなキラキラしてるね」
彼女: 「家具屋さんなのに楽しい」
彼: 「お、この部屋もすごい」
彼女: 「どれ?」
彼: 「ほら」
彼女: 「絵画?」
彼: 「みたい。
彼女: 「絵画だけど、全ての絵がキラキラしてる」
彼: 「ホントだ」
彼女: 「クリスタルかな」
彼: 「しかも名画や風景から映画の1シーンまでいろんなのがある」
彼女: 「うん」
彼: 「この映画って、好きだったんじゃない?」
彼女: 「あ・・・」
彼女: 私の目の前に現れたのは、
『ティファニーで朝食を』のラストシーン。
黒いドレスのヘプバーンが早朝のニューヨークを歩いている。
しかも等身大のアート。
ドレスの部分にはラインストーンが散りばめられている。
彼: 「遊び心満載だなあ。
ほら、バンクシーもあるよ」
彼女: 彼はきらめくアートに囲まれて、テンションがMAXになっている。
私は、それよりもヘプバーンにもう釘付け。
ドレスの裾をひらめかせ、目の前でポーズをとる美しき妖精。
こんなアートが自分の部屋にあったら、
毎日がどんなに素敵になるだろう。
私は時間を忘れて、ヘプバーンの前で立ち尽くしていた。
<シーン4/コテージ>
(SE〜森の夜/フクロウなど)
(SE〜部屋の電話のコール音)
彼女: 不躾に鳴り響くコール音。
私は束の間の現実逃避から、現実世界へ呼び戻された。
(SE〜受話器をとる音)
彼女: 「もしもし・・・」
彼女: 電話は一緒に来ているモダンダンス部の仲間。
なんと、不審者が館内にいるかもしれないと告げて電話を切った。
不安と緊張のボルテージは一気に最高潮に達する。
と、そのとき・・・
(SE〜ドアを激しく何度もノックする音)※以下何度も使用
彼女: 「うそっ!?」
彼女: 私は他人(ひと)から見たらおかしいほどに狼狽える。
ドアから一番離れたベッドに背中を押し付け、身構えた。
そこへ、友人の声で、
”早く開けて!”
”急いでここを出るの!”
という、焦って慌てた怒鳴り声が耳に飛び込んでくる。
け、警察!
そうだ、警察に電話しなきゃ。
”ねえ開けてよ!”
彼女: 「待って、先に警察に電話するから」
”それよりここを出なきゃ!”
彼女: 友人の緊迫した声に気圧されて、思わず扉を開ける。
(SE〜扉を開く音/と同時にクラッカーの音と歓声)
全員: 「サプラ〜イズ!!」
彼女: 「え?」
彼女: 扉の向こうには、モダンダンス部の仲間たちが勢揃いしていた。
(SE〜クラッカーの音と拍手・歓声)
全員: 「ハッピーバースデー!!」
彼女: 「あ・・・」
■BGM〜「インテリアドリーム」
彼女: すっかり忘れていた・・・
そうか、今日は私の誕生日・・・
彼: 「誕生日おめでとう」
彼女: 「え〜!?」
彼女: 整列した仲間たちの後ろから現れたのは、ヘプバーン!
3か月前にインテリアショップで見たアートを抱えた彼だった。
彼女: 「やだ・・・」
彼: 「事情を話したら家具屋さんがここまで運んでくれたんだ」
彼女: 「あ、ありがとう・・・」
彼: 「ここから君のアパートまでは一緒にクルマで持っていこう」
彼女: 「うん・・・」
彼: 「新しい君の1年が最高の1年になりますように」
彼女: 「もう・・・これ以上泣かせるようなこと言わないで」
彼女: 頭の中が整理できないほど、あまりにドラマティックな演出で、
私の21歳のアニバーサリーが過ぎていった。
(SE〜拍手と歓声)
全員: 「おめでとう!!」