
その川は、大河のようにゆっくり進む。
水面に散った花びらが
吹き寄せられて大きな塊となる、花筏。
ゆったりして見えるのは、
いくつもの筏だけで、
水の中は流れているのかも知れない。
桜は散っても、春は終わらないんだ。
独り言のようにつぶやく。
肩を並べて歩く桜並木は、落花盛ん。
下流に向って歩けば、花筏をいくつも追い越していく。
人のざわめきやせせらぎの音が一瞬ミュートされ、春の女神のささやきが聞こえてくる。
まるで、時の流れみたい。
いつの間にか、時の流れまで
追い越してしまったようだ。
(CV:桑木栄美里)