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あなたのいない夕暮れに 〜新訳:エミリー・ディキンソン
yori.so gallery & label
25 episodes
4 days ago
「あなたのいない夕暮れに」は、世界の名詩を現代にあわせた新訳でお届けするボイスレターです。第一弾は、南北戦争の時代を生きたアメリカの詩人エミリー・ディキンソン。 彼女は生涯を自然の中の家の中で白いドレスを着て過ごし、ほとんど外にでることがなく、窓から差し込む光を頼りに詩作を続けました。 文:小谷ふみ 朗読:天野さえか 絵:黒坂麻衣
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「あなたのいない夕暮れに」は、世界の名詩を現代にあわせた新訳でお届けするボイスレターです。第一弾は、南北戦争の時代を生きたアメリカの詩人エミリー・ディキンソン。 彼女は生涯を自然の中の家の中で白いドレスを着て過ごし、ほとんど外にでることがなく、窓から差し込む光を頼りに詩作を続けました。 文:小谷ふみ 朗読:天野さえか 絵:黒坂麻衣
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エミリー・ディキンソン「蜘蛛が銀の玉 ひとつ抱きかかえ」
あなたのいない夕暮れに 〜新訳:エミリー・ディキンソン
10 minutes 30 seconds
3 years ago
エミリー・ディキンソン「蜘蛛が銀の玉 ひとつ抱きかかえ」

こんにちは。  

灰色の空が広がり、お天気ぐずつく日が増えてきました。空のご機嫌に振り回されて、体調や気分が、すっきり晴れない日も多くあります。おかわりありませんか。  


先日、雨あがりの遊歩道の植え込みに、十以上の小さな蜘蛛の巣ができていました。レースのような巣には一面、小さな雨の丸いしずくがくっついて、そのひとつひとつが、日の光にキラキラ輝いていました。まるで、銀色に光る、雨後のオセロ大会のようでした。  


この時期は、雨の恵みを得て、草木が育ち、虫の活動も活発になってきますね。働くアリの数も増え、花から花へ舞う蝶や、クローバーに集まる小さなハチ、そして、できれば、家の中に入って来て欲しくない虫も……その対策も、そろそろ始めなくてはいけないころです。  


数年前、家族がムカデにかまれたことがありました。玄関で靴を脱ぎ、スリッパをはいた瞬間、痛みに叫び出し、こちらは何が起こったか分からず、おろおろ。その瞬間、見たことのない大きなムカデが、マッハのスピードでリビングの奥へと走り去るのが見えました。  


救急センターへ電話しながら、腫れあがる足を応急処置。幸い、大事には至りませんでしたが、その後、カーテンが揺れるだけで大騒ぎするほど、取り逃した大ムカデに、しばらく怯えて過ごしました。アナフィラキシー症候群の心配もあり、今もムカデを見ると過剰に反応してしまいます。  


私の住む場所は、自然が豊かなのはいいのですが、いろんな虫が家の中に入ってきます。でも、考えてみれば、私たちの方が、後から引っ越して来たわけで、彼らの場所にお邪魔しているのは、こちらの方なのでは、と思うようになりました。  


それからというもの、虫のみなさんになるべく迷惑をかけぬよう、家の周りに結界を張るがごとく、自衛を心がけるようになりました。具体的には、玄関に虫の好まないハーブを植えたり、窓を開けるたび、ハッカスプレーをシュッとひと吹きしたり。心なしか、思わぬ遭遇に悲鳴をあげることが減りました。家のなかに、爽やかな香りも広がり、一石二鳥です。  


ハーブやハッカに、全くおかまいなしの様子なのは、蜘蛛です。家の中、外、かまわず、よく巣を作ります。でも、お互いに使わない空間を共有しているので、現役の巣は、そのままにしています。そして、空き家になったものは、もういいよねと取り去るようにしています。  


どこにいようとも、自分の世界を、淡々と作り上げる蜘蛛。    

今日は、銀の糸が織りなす、儚い宇宙を感じる詩をおくります。  


> The Spider holds a Silver Ball  

> In unperceived Hands ―  

> And dancing softly to Himself  

> His Yarn of Pearl ― unwinds ―  

>   

> He plies from nought to nought ―  

> In unsubstantial Trade ―  

> Supplants our Tapestries with His ―  

> In half the period ―  

>   

> An Hour to rear supreme  

> His Continents of Light ―  

> Then dangle from the Housewife's Broom ―  

> His Boundaries ― forgot ―  

>   

> 蜘蛛が 銀の玉 ひとつ 抱きかかえ  

> 手のうち 見せぬまま  

> ひとり 軽やかに おどりながら  

> 真珠の糸を ほどいてゆく  

>   

> 何もないところから  

> 何もないところへと  

> 編みあげてゆく  

> 命をつむぐ そのためだけに  

> 気づけばもう  

> 壁の飾りに 取ってかわって  

>   

> 1時間もすれば それはすばらしい  

> 光とひと続きの世界が できあがる  

> つぎの瞬間 家のひとの ほうきに ぶらり  

> 世界の継ぎ目は もう過去のもの  


よく晴れたある日、近くの森におじゃましたときのことです。歩き疲れ、座ったきりかぶに、先客がいました。ムカデです。一瞬ドキッとしましたが、森のムカデは、日光を浴びながら、ひたすら、ぼーっとしていました。どれが手か足か分からないですが、時折、もぞっと手足を動かしながら。  

あの日、スリッパの大ムカデは、私たち以上に、びっくりし、怖かったのではないか。本来は、こんなにも、のんびりした生きものなのに……ごめんよと思いながら、森のひとときを、ともに過ごしました。  


穏やかに、そっと暮らしていたいだけ。  


その気持ちは、虫も、人も、同じなのですよね。  


この手前は、私の世界。  

その先は、あなたの世界。  


互いの世界の境界線を、探りながら、  

ひとつの世界を、分けあえたなら。  


でも、ひとつを共有することは、  

人同士となれば、さらに難しい。  

気づけば、際の、せめぎ合い。  


心を開け放しても、安心していられるハッカの香りが、  

心の窓際にも、シュッとひと吹き、欲しいときがあります。  

お互いに、「いい自分」のままで、いられるために。  


一方で、ハッカをまいても、まかなくても、  

おかまいなしの気ままな関係にも、憧れながら。  

そして、一度でいいから、あの透き通る銀の玉を、  

腕いっぱい、抱きかかえてみたいものです。  


ハッカの香りは、夏の、心の、窓が開く合図。  

あなたの元にも、届きますように。  


また手紙を書きます。  


あなたのいない夕暮れに。  


文:小谷ふみ  

朗読:天野さえか  

絵:黒坂麻衣  

あなたのいない夕暮れに 〜新訳:エミリー・ディキンソン
「あなたのいない夕暮れに」は、世界の名詩を現代にあわせた新訳でお届けするボイスレターです。第一弾は、南北戦争の時代を生きたアメリカの詩人エミリー・ディキンソン。 彼女は生涯を自然の中の家の中で白いドレスを着て過ごし、ほとんど外にでることがなく、窓から差し込む光を頼りに詩作を続けました。 文:小谷ふみ 朗読:天野さえか 絵:黒坂麻衣