皆さんこんにちは。今回は、ジャンプ+で連載中の漫画『こわいやさん』(カメントツ先生作)についてお話しします。この作品は、かわいらしい絵柄と本格的なホラー要素を組み合わせた、まったく新しい感覚のホラー漫画として注目を集めています。
こわいやさん 1【電子書籍】[ カメントツ ]
created by
Rinker
¥732
(2025/10/24 23:37:59時点 楽天市場調べ-詳細)
Amazon
楽天市場
かわいいのに、こわい。読者を油断させる世界観
『こわいやさん』の最大の魅力は、「かわいい」と「怖い」が同居している点です。登場キャラクターは“ゆるキャラ”風のデザインで、癒し系の日常マンガのような雰囲気から物語が始まります。
通常のホラー漫画は「怖いぞ」と心構えが必要ですが、『こわいやさん』ではその警戒心が不要です。この「読みやすさ」が特徴で、かわいい世界の中で唐突に現れる異物的な“怖さ”が、かえってリアルで新鮮に感じられます。
「こわいやさん」という店と二つの世界
物語の舞台は、どうぶつたちが暮らす「ゆるキャラ世界」です。そこには「こわいもの」を扱う不思議なお店「こわいやさん」があり、店主のうさぎさんが「今週のこわい話」を語るというのが基本フォーマットでした。
物語の進行中、毎回箱が一つ取り出され、その箱の中だけ、絵柄のリアリティラインが突然上がり、現実的で不気味な「リアル世界」が描かれます。
初期は一話完結の怪談集のように見えましたが、読み進めるうちに、これらの話が「ゆるキャラ世界」と「リアル世界」という二つの層が交錯する、ひとつの大きな物語で繋がっていることが明らかになります。
第26話で訪れる大転換 ― 世界の“バグ”としての恐怖
特に第26話は、読者の多くに衝撃を与えた回です。それまでバラバラに見えていたエピソードやキャラクターが一気に繋がり、ゆるキャラ世界とリアル世界が地続きであることが明確に示されます。
ここで語られた印象的なセリフが、この作品の根幹を成します。
「怖いとは、膨れ上がった情報のバグなのさ」
作中では、「情報には質量がある」という独自の仮説が提示されます。データが詰まったメモリーカードは空のカードよりわずかに重い、百科事典は単なる紙の束より“詰まっている”感じがする、といった例です。
情報が増えすぎた結果、世界が歪み、バグ(怖いもの)が発生する。そして、人類はその歪みを軽くしようと、リアル世界を簡略化――つまり、情報量の少ない「ゆるキャラ世界」に変えていったのだ、という驚きの真相が明かされます。
この設定により、デフォルメされたかわいいキャラクターたちにも、「世界を軽くするために情報を省いた存在」としての必然性が生まれました。単なるホラーではなく、現代の情報過多社会へのメタ的な寓話としても解釈できる、ロジカルに再構築された恐怖の定義に、読者は大きな衝撃と感動を覚えまし...