
今回のテーマは、人工知能(AI)の急速な導入が進む中で、医師のコアな臨床スキルがどのように変化し、それを守るためにどのような戦略が必要か、という極めて重要な論点です。
AIを安全に歓迎しつつ、私たちのプロフェッショナルとしての根幹をなすスキルを守るために、今私たちが下すべき決断とは何でしょうか。研修医がAIに依存しすぎて基礎能力が育たない「ネバースキリング」のリスク や、AIに頼りすぎる「自動化バイアス」の問題 についても、地域医療やプライマリ・ケアの視点から掘り下げて対話します。
-----
AIが臨床診療に組み込まれるにつれて、臨床タスクの外部委託により医師のスキルが失われる(デスクリング)懸念が高まっています。実際、AIポリープ検出システムを3ヶ月間使用した経験豊富な大腸内視鏡検査医を対象とした観察研究では、AI支援なしで検査を行った際に腺腫検出率がAI使用前のベースライン性能を下回る医師が確認されました。この研究は、AIが関わる消化器内視鏡検査にとどまらず、手術、画像診断、診断推論など、幅広い分野でデスクリングの潜在的可能性を示唆しています。
デスクリングを軽減するため、航空業界などの他産業の教訓に学び、「AIオフ」期間を意図的に設ける、あるいはAIがルールベースの作業を担い、医師が高難度の決定に集中するような明確な境界設定が、スキル維持の戦略として提案されています。AIの急速な普及において、臨床スキルをどのように保護し、AIシステムを信頼できるか評価する能力を維持できるかが重要な課題となっています。
Budzyń K, Romańczyk M, Kitala D, et al. Endoscopist deskilling risk after exposure to artificial intelligence in colonoscopy: a multicentre, observational study. Lancet Gastroenterol Hepatol 2025; 10: 896–903.
#地域医療 #プライマリ・ケア #いなか医師の勉強ノート #AI #デジタルヘルス #内視鏡