
医師のコンパッション(思いやり)は、患者のアウトカム改善と関連することが知られていますが、具体的に医師のどの行動が患者にコンパッションとして体験されるのかは、これまで不明瞭でした。今回は、米国都市部の2つの学術救急部門(ED)で2023年9月から2024年5月にかけて行われた横断研究の論文を取り上げ、この疑問に迫ります。
この研究では、成人患者1025名が参加し、検証済みの5項目コンパッション尺度と、コンパッションに関連すると提案されてきた27項目の医師の行動について回答しました。機械学習アルゴリズムLASSOを用いた分析の結果、患者のコンパッション経験の変動の約3分の1(r2 = 0.34/0.32)を予測する9つの行動が特定されました。最も強い関連性を示したのは「あなたの言うことに注意深く耳を傾ける」という行動です。
また、特定された9つの行動は、患者に集中し、真に傾聴し、懸念を理解し、希望を伝え、非判断的であること(non-judgmental)を中心としています。さらに興味深いことに、探索的分析では、女性の患者にとっては3つの行動が、黒人患者(非ヒスパニック系白人患者と比較して)にとっては5つの行動が、より強い関連性を持つことが示唆されており、コンパッションの示し方が「画一的ではない」可能性も指摘されています。
本研究は、患者がより高いレベルのコンパッションを経験するために、医師が実践すべき具体的な行動の初期的なフレームワークを提供するものです。
Marks CM, Baptista P, Gaines C, Jones CW, Remboski L, Nyce A, Scudder AM, Haimovich AD, Shapiro NI, Trzeciak S, Roberts BW. Machine Learning to Identify Physician Actions Associated with Patient Experience of Compassion. J Gen Intern Med. 2025. DOI: 10.1007/s11606-025-09914-8.
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