
円形脱毛症(AA)は、毛を作り出す毛包を主な標的とする後天性の自己免疫性疾患であり、その重症度は多様で、患者さんのQoLを大きく低下させる深刻な課題を含んでいます。従来の治療法には限界がありましたが、2022年以降にJAK1/2阻害剤、2023年9月にはJAK3/TECファミリーキナーゼ阻害剤といった新規薬剤が重症AAに対して保険適用となり、治療環境は一変しました。この劇的な変化と、AA病態に関する基礎研究の進展を受けて、最新の診療ガイドライン2024年版が策定されました。
本ガイドラインでは、AAの治療選択を「AA-cube」(年齢、重症度、病期)という3次元空間で捉える新しい考え方が提示されています。具体的な治療法としては、軽症例に対するステロイド局所注射や外用が引き続き強い推奨度(推奨度1)を持つ一方、脱毛部位が広範囲に及ぶ難治例に対しては、厳格な条件のもとで経口JAK阻害薬の使用が強く推奨されています。また、医学的な治療だけでなく、QoL改善のための「かつらの使用」も強い推奨度(推奨度1)として明記されています。今回のエピソードでは、この最新のガイドラインを読み解き、地域医療の現場で円形脱毛症の患者さんにどのように向き合っていくべきか、最新の知見と治療戦略について、深掘りしていきます。
円形脱毛症診療ガイドライン策定委員会. 円形脱毛症診療ガイドライン 2024. 日皮会誌. 2024; 134(10): 2491–2526.
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