
今回のエピソードでは、私たちが日々の診療で肌で感じている「患者さんの病気がだんだん複雑になっている」という疑問に、世界的な巨大論文「Global Burden of Disease Study 2023 (GBD 2023)」のデータから迫ります。感染症が減る一方で、なぜか増え続ける「心の病」と「メタボ」の脅威。この壮大な研究結果を、いつもの対話形式で楽しく、しかし深く読み解いていきましょう。--------------------------------------------------------------------------------Global Burden of Disease Study 2023(GBD 2023)は、375の疾患と88のリスク要因に関する体系的な分析です。
2010年から2023年にかけて、年齢標準化された疾病負担(DALY率)は全体として12.6%減少しましたが、人口増加と高齢化を考慮すると、非感染性疾患(NCDs)による負担(DALY数)は増加傾向にあります。特に、不安障害(62.8%増加)や抑うつ障害(26.3%増加)といった精神障害、および糖尿病(14.9%増加)の年齢標準化DALY率が、NCDの中で最も増加していることが示されています。また、2023年の全疾病負担の約46%が修正可能なリスク要因に起因しており、そのトップは高血圧、粒子状物質汚染、高血糖、喫煙で、特にメタボリックリスク要因による負担が増大している点が強調されています。このデータは、感染症対策の成功を維持しつつ、NCD対策と予防への継続的な投資の必要性を裏付けています。
GBD 2023 Disease and Injury and Risk Factor Collaborators. Burden of 375 diseases and injuries, risk-attributable burden of 88 risk factors, and healthy life expectancy in 204 countries and territories, including 660 subnational locations, 1990–2023: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2023. Lancet. 2025; 406: 1873–922.
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