
11月に始める「顧客リスト×LTV伸ばし術」戦略(3ステップ)
ステップ1:顧客資産の棚卸しと収益性の明確化
まず、限られたリソースを最も効果的な顧客層に集中させるために、顧客リストの整理と、広告投資の判断基準となる収益指標を明確にします。
1. 顧客リストの精査と戦略的グループ分けの実施: 顧客を「ひとくくり」で考えるのは戦略的に不十分です。顧客の属性(誰に向けて)によって、提案すべき内容やタイミングが異なるため、以下の5つのグループに分類し、管理を始めます。
◦ 優良客(VIP客):上位20%の顧客。
◦ リピート客:購入回数が4回以上(VIPを除く)。
◦ 2~3回目客:リピート定着の鍵となる層。
◦ 新規客:購入回数が1回。
◦ 離脱客(休眠客):最終購入から半年以上経過した顧客。
2. LTVと限界CPAの算定による広告費の限界ライン設定: 広告費を無駄にしないためには、限界CPA(顧客獲得コストの上限)を把握することが不可欠です。限界CPAは、顧客が将来にもたらす売上(LTV:顧客生涯価値)に基づき、新規顧客獲得にいくらまで費用をかけられるかを決定します。LTVを把握し、広告費(広告コスト、人件費、手数料などの諸経費を含む)が限界CPAを超えていないかを常にチェックすることで、安心してビジネスを加速できます。
3. 優良客(VIP客)の特定と特別優遇: VIP客は、他の顧客よりも頻繁に購入し、クレームが少なく、紹介者になってくれる可能性が高い層です。この層は新規顧客獲得コストの1/5〜1/10のコストで再販売が可能であり、販促計画において最重要ターゲットとして位置づけ、一般客とは異なる優遇(特典や高単価商品の提案など)を提供できるように準備します。
ステップ2:短期的なLTV最大化のための即時行動
11月中に、既存顧客の客単価(購入総額)を引き上げ、顧客獲得コストを早期に回収するための施策を実行します。
1. 購入サイクル直後のアップセル・クロスセルの徹底: 新規顧客獲得後の1〜2ヶ月以内に利益を最大化することが、ビジネスをスピーディに拡大する上で重要です。顧客が「財布を開く」瞬間(テンションリダクション)はガードが緩むため、購入時、納品時、請求書送付時、およびアフターフォローのすべての接点を追加セールスのチャンスとして活用します。例えば、請求書に商品の案内チラシを同封することは、必ず開封される媒体として有効です。
2. 価格設定の見直しと「松竹梅戦略」の導入: 値下げは利益を減らし、競合との価格競争を引き起こすため避けるべきです。客単価を引き上げるために、既存の商品・サービスよりも上位のランクの商品(松)を用意し、3択(松竹梅)で提示します。これにより、顧客は中間価格帯(竹)を選びやすくなり、客単価を引き上げることができます(ゴルディロックス効果)。
3. リスクを肩代わりする保証の付与: 顧客は高額な買い物や新しいサービスに対し「期待外れだったらお金の無駄になる」という金銭的リスクを負っています。この不安を取り除くため、会社がリスクを肩代わりする大胆な全額返金保証を提供します。良質な商品であれば返金を求めてくる人はほとんどおらず、購入のハードルを大きく下げることができます。
ステップ3:翌年を見据えた継続的な収益基盤の構築
年末の勢いを翌年の安定売上につなげるため、顧客の離脱を防ぎ、継続的な収益源を確保する仕組みを11月中に計画します。
1. 2回目・3回目利用への徹底的な誘導: 新規顧客がリピートしない最大の原因は「なんとなく忘れてしまうこと」です。2回目利用率が倍になれば、3回目以降の購入数も倍になるため、最初の利用時から2回目、3回目の購入に至る「理由」(特典や割引券)を渡し、定期的なDMやメールで忘れられないようにリマインドします。特に消耗品ビジネスでは、お客さんが商品を使い切る直前を予測して買い足しを促すセールスが有効です。
2. 継続課金システム(サブスクリプション)の導入促進: 売上が落ち込む時期(特に2月)に経営が圧迫されないよう、毎月1日に一定額の売上が確定する継続課金システム(サブスクリプション)を導入し、ビジネスの底上げを図ります。導入を促すために、初月に大幅な割引をするなどの「定期購入の初月限定キャンペーン」を戦略的に打ち出し、翌年の安定収入の種をまくことが推奨されます。
3. 離脱客の再活性化計画: 休眠客(離脱客)は、再販売コストが低い重要な資産です。彼らに対しては、新春キャンペーンや創立記念日など、お得感の強いキャンペーンを打てるタイミング(理由付け)を年間計画に組み込みます。